CASE 15

一般財団法人 児童健全育成推進財団・ナイキジャパングループ合同会社

(2018年4月〜)

ナイキとパートナーシップを組んで
実施している「JUMP-JAM」の広報をサポート。
企業と非営利団体の間に立ち、最適な言語を選びながらPRを設計

子どもたちの健全な育成のため、全国の各地域の児童館や、放課後児童クラブ・母親クラブの活動を支援する「児童健全育成推進財団」(以下、児童育成財団)。2018年、児童育成財団がスポーツブランド・ナイキと共に開発し、東京都内の児童館で実施している運動遊びプログラム「JUMP-JAM(ジャンジャン)」を社会に発信したいというご依頼をいただき、大型イベントの開催の支援からおつきあいが始まりました。一般財団法人児童健全育成推進財団 総務部 部長の阿南健太郎さんにお話をうかがいました。

「非営利団体の土壌や背景を理解しているPR会社というのは貴重な存在」

一般財団法人児童健全育成推進財団 総務部 部長の阿南健太郎さん

ひとしずく担当 たかはしあすか(以下、たかはし):
ひとしずくにご依頼いただいたのは、どういった経緯だったのでしょうか。

一般財団法人児童健全育成推進財団 阿南健太郎さん(以下、阿南さん):
運動遊びプログラム「JUMP-JAM(ジャンジャン)」の立ち上げ当初、JUMP-JAMはスポーツではなく、その一歩手前にあるものなので、プログラムの重要性を社会に伝えるためには社会課題設定を含めたPRを強みとしているパートナーが必要だと感じ、社会課題に関心があり、知識がある人材が揃うPR会社を探していました。そんな時、日本NPOセンターさんからご紹介を受けたのがひとしずくさんです。以前、ひとしずく代表のこくぼさんが講師を勤めていたNPOのための広報講座に参加したこともあって、あの方の会社ならという思いもあってご相談させていただきました。

たかはし:
ありがとうございます。ご相談をいただいた時に感じていらっしゃったのは、どんな課題だったのでしょうか。ひとしずくにはどんな役割を期待していたのでしょうか。

阿南さん:
私自身としては、広報に携わって10年になるんですが、明確に決まった手法というものを自分のなかに確立できていないなというのはありました。その時々自己流で、もちろんブラッシュアップしながらやってきてはいたのですが、自分たちがやっているから一定以上の幅から出られないなという感覚がありました。

課題のあるお子さんの話はメディアでも取り上げていただくことが多いのですが、児童館に来るお子さんも課題を抱えたりすることもありますが、一見すると健康で元気なので、楽しく遊んでいるだけと見られてしまうとなかなか紹介をしていただきにくいんですよね。児童館がやっていること、JUMP-JAMのこと、その意義をきちんと世の中に発信していきたいと思っていて。

NPOのための広報講座のなかで、こくぼさんはご自身で会社を立ち上げた経緯についてもお話されていたのですが、NPOやNGOを広報の側面から支える仕事というのは、すごく大事な仕事だし、今後もっと求められていくと思いました。NPO・NGO業界としても、そこに特化したPR会社の存在は心強いですし、業界として大事にしていくべきだとも感じました。

というのも、社会的課題に敏感な人材が揃うPR会社でないと、社会的に我々がこういう仕事をやり続けなきゃいけない、ということを理解していただくのにまず時間がかかってしまうんです。「NPOですよね、知ってます!」というレベルから始まるのではなく、もっと非営利団体のことを理解していてほしい。ひとしずくさんは、会社ではあるけれど非営利団体に近い存在で、社会的な企業としてやってらっしゃるので、スムーズにやりとりができそうだし、効果が出せるんじゃないかと思いました。実際にお仕事を依頼して、PRが苦手だとか非営利団体の弱い部分や言語の違いなどをわかってくださっているのがすごく新鮮で、ありがたいと感じました。

たかはし:
非営利組織や団体さんと、企業の考え方とでは違う点が多々あると思います。環境への配慮ですとか、周囲からの視線も含めて考慮すべきことがありますし。その点、ひとしずくにはずっと非営利団体などで活動していたメンバーが集まっているので、土壌を理解したうえで、社会課題をともに解決するパートナーとして仕事をさせていただいています。

企業と非営利団体が協働するときに、言葉をどのように選ぶか。「ひとしずくさんが担う重要な役割」

たかはし:
JUMP-JAMは、児童育成財団さんとナイキさんが共同開発した運動遊びプログラムで、広報・PRの役割としてひとしずくがチームに加わって1年が経ちます。ひとしずくとしては、まずはJUMP-JAMを広く知ってもらうための基盤づくりを目指して、その意義や概要を明文化する取り組みやJUMP-JAMに関わるパートナーがそれぞれ持つストーリーを可視化する取り組みなどを進めてきました。

広報活動をおこなっていくにあたり、非営利団体と企業がパートナーシップを組み、新しい運動遊びの文化を創ろうというプロジェクトという点で、画期的であると感じながらも、新しいパートナーシップであるため私たちも当初迷いながら取り組んできました。阿南さんから見ての率直な評価や、期待されていたことに応えられているのかどうかを教えていただけますか。

阿南さん:
リリースひとつとっても、言葉をすごく大事にされている会社だなと感じました。企業と非営利団体のコラボレーションしたプロジェクトというなかで、社会課題を捉えつつも、世の中一般の方に届くように工夫されていたと思います。

非営利団体と企業が、対立関係でも上下関係でもなく、パートナーとしてどのように付き合っていくのか、ということは、私たち非営利団体側としても問われている課題だと思っています。我々も感度を上げていく必要はあると思うのですが、間にひとしずくさんに入ってもらうことで、両方の良さを見たうえで、ちょっと斜め上みたいな提案をしてもらえると、非営利団体にとっても企業にとっても発見があると思います。非営利団体にも企業にもなかった視点や切り口でご提案いただくことで、違う層にリーチできる可能性が広がるんじゃないかなと。間に入ってそういった提案をしていただけると、企業と非営利団体の協働をより深めていけるんじゃないかと思います。

今後、企業・NPOにさらに行政が入った体制など、コレクティブなかたちでどう発信していくか、というのは業界の課題として挙がってきていることなんです。そういった三者間での翻訳機能となる人は必要ですし、そういった体制になったときに、発信するのに適した言葉を選んでいくのは、NPOや非営利団体が考えるべきことではないような気がしていて、そここそまさにひとしずくさんのような会社にお願いすべき部分だと思うんです。NPOや非営利団体が企業や行政に合わせたメッセージを考えて発信することに、違和感があるんですよね。サードセクターだからこそ言うべきこと、言えることがあり、そこを迎合してはいけないんじゃないかと。では、正しい形でコラボレーションしていくときに、言語はどこに収まるのか……そういった現場で言葉を創っていく仕事は、今後も、ひとしずくさんに大いに期待するところです。

たかはし:
これまで弊社が取り組んできた部分が、阿南さんの言葉で言語化されたように感じます。使う言語が違うなかで、どちらかに合わせる必要もないですし、日々、ベストは何か考えながら取り組んできました。今後も、ご期待に応えられるように、悩みながらも、ベストな言葉を探して丁寧に取り組んで行きたいと思います。

児童館の存在意義を世の中に伝えるために。「業界を超えて合うものはどんどん取り入れたい。提案を期待しています」

2018年5月13日、二子玉川ライズで「JUMP-JAM PARK」と題してイベントを行なった

たかはし:
私たちが支援させていただいた最初の取り組みが、2018年5月13日に開催された「JUMP-JAM PARK」でした。普段は児童館のみで実施しているJUMP-JAMプログラムを、児童館に来たことがない子どもたちにも体験してもらえるように、という想いから、JUMP-JAMとして初めて児童館外で開催。当日は1000名以上の方にご参加いただいて、保護者の方が驚くぐらい子どもたちが楽しんで身体を動かしている姿も多く見られました。ひとしずくは、イベント全体の設計から、当日保護者の方にお配りしたJUMP-JAMの概要をまとめたファミリーガイドの制作なども行いました。成果はどうでしたか。

阿南さん:
「JUMP-JAM PARK」は、多くの方にJUMP-JAMの魅力をお伝えするため、かなり大掛かりに取り組んだイベントでした。JUMP-JAMのイメージもそうですし、企業のブランドを損ねることなく、様々な要件がある中、訴求する必要がありました。ひとしずくさんには当日までかなり負担をかけたんじゃないかなと……ありがとうございました。でも、たくさんの子どもたちが来場してくれて、とても喜んでくれたので、初期の目標は達成できたと思います。

たかはし:
私も正直なところ、どれだけの方に来ていただけるのか正確に把握はできなかったのですが、イベント中は絶えず子どもたちが来てくれていたのでとても嬉しかったです。子どもたちが「楽しかった!」と笑顔で帰っていく姿はもちろん、保護者の方から「どこの児童館でやっているんですか?」と聞かれたり、「普段は人見知りなのに、今日は知らない子とも遊んでいて驚きました」といった反応があったり、今後につながるイベントになったという手応えも感じました。

阿南さん:
「JUMP-JAM PARK」開催後も、二子玉川ライズとご縁をいただいたことで、2018年9月にも、「Mini JUMP-JAM PARK」というイベントを二子玉川ライズで開催しました。なかには、5月の「JUMP-JAM PARK」が楽しかったからまた来ました、と言う子もいたんですよ。1回のイベントで終わらずに、その後につながったなと実感しました。今年も一度は「Mini JUMP-JAM PARK」をやりたいという話は出ていますが、大きなイベントを行なってPRする段階は一旦終わったと認識しています。JUMP-JAMを実施できる児童館も増えているので、それぞれの地域で小さな規模でイベントを行なうなど、じわじわと地道に広げていくフェーズに入ったと思っています。

たかはし:
私たちひとしずくとともに仕事を行うことで変化したことやよかったこと、逆にもっと改善してほしいことがあれば教えていただけますか。

阿南さん:
「社会にとって児童館が役に立つ」ということを世の中に伝えていく必要性を感じていて、本当は私たちもアグレッシブに広報していかないといけないんです。でも、コンテンツや情報はいっぱいあるけれど整理されていない状態でここまでやってきてしまった。いきあたりばったりで、その時その時に情報を小出しにしてきた10年という感覚です。

ひとしずくさんには、「こんなにいろんなものを持っていらっしゃるんだから、もっとうまく、良い形で世の中に出していきましょう」と言っていただいて、いっしょに整理してもらっているところですね。私だけではなかなか整理しきれないところを、外からの目線を持ったひとしずくさんの存在があることで、非常に助けられているなと感じています。

「子どもが真ん中で、子どもが主役。自分で自分のくらしを大事にしていける子どもたちを増やすことが幸せにつながるのではないか。塾に通わせるスポーツクラブに通わせることだけが幸せに繋がるのではない、多種多様な経験ができること、自分の意見を聞いてもらえたとか、自分で考えて行動した結果、達成感を得られるとか、そういうものが日常に転がっていることが子どもにとっては大事なんだよ」。そんなメッセージを世の中に発信していこうとしています。

すぐに社会が変わるとは思ってはいないのですが、JUMP-JAMを世の中に周知できたことで自信になったということもあり、今度は「児童館」に立ち戻って、そのコンセプトを多くの方に知ってもらいたいんです。

我々のフィールドである「児童館」という場所で、社会課題にどうアプローチできるかを考えて実行し、それを世の中にうまく伝えていきたいと思っています。困った時に活用できる場所として、一般の方に認識してもらいたい。相談所に行くその手前に児童館があって、児童館職員がいる。児童館って、課題が持ち込まれたときに、いくらでもアレンジしてプログラムを提供できる場所なんです。ママたちのサークル作ろうということであれば、この人に相談するといいのでつなぎますね、とか。たくさんの方に活用してもらうために、どう役に立つのか知ってもらいたい。多様でさまざまなプロジェクトに関わっていらっしゃるひとしずくさんには、今後も私たちにはない視点、違った切り口で、私たちが考えもしなかったことをご提案してくださることを期待しています。

子ども業界では前例がなくても、社会的な課題は違っても、参考になったり真似したりするとよいことはたくさんあるはずなので、うちに合うと思うものはどんどん提案してもらいたいです。選択肢が増えることは、私たちとしてはとてもありがたいことです。

社会課題に取り組んでいる団体って、テーマごとに分かれていて、なかなかクロスする機会がないので、視点として提案していただきたいということもそうですし、コラボレーションの提案もしていただきたいです。

たかはし:
ありがとうございます。今回のお話を、引き続きお仕事にも生かして、どんどん提案させていただきたいと改めて思いました。今後ともよろしくお願いいたします。

ひとしずく担当のたかはしと児童育成財団の阿南さん、山田さん

 
撮影:平林直己 編集:ちばたかこ

RECENT WORKS

社名ひとしずく株式会社
所在地本社:〒231-0003 横浜市中区北仲通3-33
大磯オフィス:神奈川県中郡大磯町大磯636-1
電話045 900 8611
FAX045 330 6853
メールinfo@hitoshizuku.co.jp
代表こくぼひろし
設立2016年3月
資本金3,000,000円
事業内容広報及びパブリックリレーションズ代理業
ソーシャルグッドプロジェクトの企画・制作・運営
顧問弁護士丁絢奈(よこはま第一法律事務所)
税務顧問元小出 悟(会計事務所ユニークス)
顧問社労士社会保険労務士法人ワーク・イノベーション