CASE 33

特定非営利活動法人 NPO サポートセンター

(2022年10月1日~2023年4月30日)

NPO広報をお願いするなら、ひとしずく。
自分たちが気づかなかった課題を見つけ、前進できた

昨今、社会課題に取り組もうとする団体は増えており、多様化しています。日本で初めての民間によるNPO支援団体であるNPOサポートセンターは、数々のNPOの人材育成、事業支援などを行ってきました。設立30周年を迎えた2023年、業界へ向けたさらなる広報活動が必要との認識からお声がけをいただき、&PUBLIC株式会社(アンドパブリック)と共に、ロジックモデルの構築など、組織の体制づくりを実施しました。ひとしずくと一緒に課題に取り組むことで新たに得ることができた気づきなどについてお話をお伺いしました。

NPO広報をお願いするなら、ひとしずく。社内の意見が一致した

特定非営利活動法人NPOサポートセンター代表理事 松本祐一さん

ひとしずく担当 こくぼ ひろし(以下、こくぼ):
ひとしずくにお声がけをいただいた際、どのようなことが課題だと感じていらっしゃいましたか。

特定非営利活動法人NPOサポートセンター代表理事 松本祐一さん(以下、松本さん):
2019年にNPOサポートセンターの代表を私が受け継ぎ、新体制になったタイミングで「VISION2020」と称して、私たちが目指す未来を描きました。その未来に向かって自分たちが何をすべきかを議論する中で、「広報活動が手付かずになっている」ということに気づきました。特に、私たちはNPOの活動を後ろから支え、その成果をいかに社会に届けるかを地道に考えてきた中間支援組織です。「私たちはこんなことやっています!」と前面に出て私たち自身のPRをすることをあえてやってこなかった面もあったのですが、このままではいけない、と思うようになりました。

こくぼ:
私たちも「後方支援」をしていて自らのPRはほとんどやっていません(笑)私は元々新卒で中間支援組織に就職したかったんです。NPOサポートセンターさんにはPRパーソンになりたての時から継続的に広報講座に呼んでいただいたご縁もありますが、自身の広報活動が必要だと感じたきっかけは何だったのですか?

松本さん:
研修、企業とNPOをつなぐ取り組み、事務サポート、自治体サポートなど、私たちの事業はさまざまです。スタッフの採用は、事業単位で募集をしていました。そのため「この事業に関する仕事をしたい」という方は多くいらっしゃる一方、中間支援組織という特性からなのか、私たちのビジョンに共感して組織の一員になりたい方がなかなか現れないところに課題を感じていました。
また、同じタイミングでスタッフにアンケートをとったら、「自分たちのやっていることがもう少し世の中に評価されても良いのではないか」という意見が多くあがったのもきっかけの一つです。認知が広がれば、社内のモチベーションやエンゲージメントの向上にも繋がります。
さらに、議論を進めていくと「サービスを提供している団体さんだけでなく、もっと社会課題に取り組む組織とコミュニケーションをとった方が良いのではないか」という意見も出てきました。私たちの業務は経営・事業支援なので、担当者ベースのコミュニケーションはとても盛んなのですが、組織のトップ同士ではあまりありませんでした。時々、私もイベントなどでNPOのトップの方と対談をすると、新たな気づきを得たり、そこからお仕事につながったりという経験がありましたので、もっと組織全体で業界の方々とコミュニケーションしていく必要性を感じていました。

こくぼ:
その広報活動を内部のメンバーで行うのではなく、外部にお願いしようと考えたのはなぜだったのでしょうか?

松本さん:
広報活動を行うには、私たちが生み出している成果を周囲に伝えていく必要があるというところまで議論は進んでいました。ですが、広報全体をディレクションできるメンバーがおらず、「この先は誰がどこまでやるの?」という状態でノウハウもなかったので、外部の方にお願いすることも視野に入れていました。
こくぼさんとは以前、イベントでご一緒していたので、ひとしずくのことは知っていました。ソーシャルセクターやNPOのことも十分理解されている、ソーシャルグッド専門の後方支援ファームということで、私たちにぴったりだと感じました。「NPOの広報を専門的に行えるのはこくぼさんしかいない」ということでメンバー全員の意見が一致したので、お声がけをしました。

自分たちでは気づかなかった本質的な課題を見つけてもらえた

「外部に向けた情報の発信より、まずは内部の意識が統一されている状態を」

こくぼ:
ご一緒できることになって、NPOサポートセンターの皆さんとお話しをする中で、ご依頼をいただいた内容と実際の課題の間にギャップを感じました。まずは、描いているビジョンに対して、どのような課題があって、その課題を解決するためにどのようなインプット・アウトプットが必要なのかを明らかにし、社内全員で意識を共有する必要がありました。なので、外部に向けた情報の発信より、まずは内部の意識が統一されている状態を整えてから、広報体制をつくっていくほうが良いのではないかというお話しをしたのが最初でしたね。

松本さん:
そうですね。ビジョンもつくったし、そこに向けた自分たちの戦略についてはある程度組織内で合意ができていると思っていたんです。ところが、実際こくぼさんとお話しをする中でそうではないことが分かってきました。それぞれのスタッフは自身の関わる仕事からビジョンを見ています。そのためにスタッフ間でも微妙に認識のズレが発生していたのだと思います。また、ビジョンや戦略というのは定期的に見直さないとズレが発生してしまうということにも気づきました。

こくぼ:
そこで、私が取締役として参画している&PUBLIC(アンドパブリック)の協力のもと、ロジックモデル構築のワークショップを行いました。実現したい未来に向けて、現状どのような課題があるのか、また、課題解決のためにどのようなインプットやアウトプットが必要なのかを整理していきましたね。実際にひとしずくと&PUBLICにお願いして良かったと思う点はありますか?

松本さん:
「自分じゃ分からない自分もあるのだ」ということは新鮮な発見でした。普段コンサルティング業務をしていますから、自分たちの組織を客観的に見ているつもりでしたが、気づけない部分があり、第三者の視点を入れることによって「新たな自分」を発見できるということが分かりました。
例えば、目の前の自分たちの仕事が生み出している成果は分かっていても、その成果が私たちの目指す未来にどうつながるのか、スタッフ間であまり理解できていないという課題が見えてきました。ビジョンを共有できているはずなのに、私たちが何となくモヤモヤと不安に思っていた正体はこれだったのか!と腑に落ちました。
また、私たちは支援の過程で、支援先がつくったロジックモデルを拝見する機会があったのですが、実際につくることはあまりやってきていなくて。改めて自分たちのためにロジックモデルをつくることの大切さを身に沁みて感じました。

&PUBLICと一緒に開催したロジックモデルワークショップの様子

こくぼ:
ロジックモデルの構築は、組織の状況によっても全くやり方が異なるのですが、今回は各事業の皆さんとお話をしながら進めました。みなさんが実直に取り組んでくださったおかげで、内部で議論していた時には出てこなかった話もお聞きできたと思います。

松本さん:
ワークショップの中で、「納得いかないところは納得いくまで話し合い、最後までこだわって考える」という自分たちの姿勢も見えました。内部の議論だけでは分からない自分たちの良い面を知ることもできる機会となり、良かったです。
&PUBLICのみなさんの元気さ、ロジカルさに加え、こくぼさんのやわらかい雰囲気がとても心地よく、ワークショップやミーティングの中でも私たちの意向や疑問を丁寧に拾っていただけたと満足しています。

こくぼ:
ありがとうございます。自分たちは「発注されている」立場というよりは、ご依頼くださった組織の方々の「一員として一緒に課題を解決していく」という姿勢を大事にしているので、とても嬉しいです。
あとは、ひとしずくとして改善すべき点についてアドバイスがあれば、是非教えてください。

松本さん:
私たちに必要なアクションの優先順位を考えてのことだったと思うのですが、時間や予算の都合もあって、当初お願いしたいと思っていた、外部に情報を発信する広報業務をお願いするところには至りませんでした。
ロジックモデルの構築のほかに、こくぼさんから、「NPOサポートセンターの概要が分かる資料があった方が良い」とのアドバイスを受け、私たちの団体の成り立ちや事業を説明する資料を作成しました。採用説明会でその資料を配ったらとても反応が良くて。そういった広報に関するアドバイスは本当にありがたかったので、もっとこくぼさんからお聞きしたかったなと思います。予算の都合もあるので、欲張りな話だと思うのですが(笑)。

強みを活かしながら、持続可能なNPOの体制をつくっていきたい

こくぼ:
今後、ひとしずくと取り組みたいと思うことはあるでしょうか?

松本さん:
今回は私たちが支援をお願いする側でしたが、今後、ひとしずくさん、&PUBLICさん、NPOサポートセンターそれぞれの強みを活かしてNPOの支援を一緒に行ったら面白そうだと思っています。
今回の私たちのように、第三者の視点がなければ把握できない課題が多くのNPOに存在すると思います。社内におけるビジョンの認識のズレが発生していながら、気づかない例もあると思います。まずは、組織の現状を診断して、ロジックモデルを構築しながら必要なアクションを見極めていく仕組みがつくれたら、とても役に立ちそうです。
あとは、広報活動に予算や時間を割けるNPOがまだまだ少ないというのも課題だと感じていて、何とかしたいなと思っています。

こくぼ:
私もそう感じています。NPOの広報活動が業界全体でより強化されていけば、経営基盤が強固になり、新しいつながりや支援に結びつくと思います。持続可能な運営をするには必要なことだと信じてこの仕事に取り組んでいます。

松本さん:
NPOが自らの活動について広く知らせ、寄付や会費など、資金を調達することはもちろん非常に大切な活動なのですが、資金調達以外の文脈で広報活動を行うことも、同じく重要だと思っていて。あらゆるステークホルダーに対して、自分たちのミッション・ビジョン・バリューを発信して、共感してくれそうな方とコミュニケーションをとることが、思いもしなかった新たな活動に結びつくかもしれません。1+1イコール2ではなくて、1+1イコール3にも4にもなるようなコラボレーションを生み出すための広報活動が業界全体に広がっていくといいなと思います。

こくぼ:
同じ思いを持ったNPOがもっと増えていくと良いですね。

松本さん:
今回ロジックモデルを改めて構築してみて、もちろん変えなければいけない部分もあるものの、私たちのミッション・ビジョン・バリューは大きく変わっていないのだ、ということを全員で再確認でき、自信が持てました。ずっと何かを変えなくてはいけない、とモヤモヤしていたのですが、ひとしずくさんや&PUBLICさんに「そのままでいいんだよ」と背中を押してもらえました。
同じように悩んでいるNPOの方々がまだまだいらっしゃると思います。そのような方々の力になって、勇気づけることができるのは、私たちの仕事の醍醐味です。まだまだ私たちの力を必要としてくださる組織がたくさんあると信じて、一緒にこの業界を盛り上げていけたら面白いですね。

撮影:ほりごめひろゆき 編集:つじはらまゆき

RECENT WORKS

社名ひとしずく株式会社
所在地本社:〒231-0003 横浜市中区北仲通3-33
大磯オフィス:神奈川県中郡大磯町大磯636-1
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代表こくぼひろし
設立2016年3月
資本金3,000,000円
事業内容広報及びパブリックリレーションズ代理業
ソーシャルグッドプロジェクトの企画・制作・運営
顧問弁護士丁絢奈(よこはま第一法律事務所)
税務顧問元小出 悟(会計事務所ユニークス)
顧問社労士社会保険労務士法人ワーク・イノベーション