CASE 42
松栄建設株式会社
(2023年6月1日~2024年9月3日)
お客様や社会のしあわせをつくりたい。想いを共に、広報の「型」を確立できた
「まず第一にお客様に喜んでもらうこと。その対価としていただいた感謝の気持ちやお金をまちに還元し、日常にしあわせをつくりたい」————そう考える「くらしとすまいの松栄」は、神奈川県横浜市妙蓮寺駅にある、地域に根ざす不動産建築会社です。住宅の設計や賃貸管理にとどまらず、古民家を開放したイベントの開催や、妙蓮寺エリアの魅力を伝える地域メディアの運営など、独自の取り組みを続けています。その活動の価値を十分に伝える広報の仕組みがなく、想いをどう伝え、広く発信すればいいのか課題を感じていた頃、ひとしずくにお声がけをいただきました。そこでひとしずくとともに広報に対する考え方や実務を取り入れながら自分たちに合った広報の「型」をつくり、計画的な情報発信へとシフトしました。活動を続ける中、創業65周年を前にリブランディングを決意。ひとしずくとも関わりの深いデザインスタジオ『tegusu』も加わり、ミッション・ビジョン・バリューを改めて整理し、コーポレートロゴを変更、新たなローカルメディアの公開を開始しました。ひとしずくにお声がけいただいた理由や、ともに取り組んだ感想などについてお話しを伺いました。
「いただいた利益をまちに還元する不動産屋」の想いを理解してくれる広報パートナーだと感じた

ひとしずく担当 たけうち ゆき(以下、たけうち):
初めてお会いしたとき、「くらしとすまいの松栄」さんが、住宅の設計や施工、賃貸管理など住まいに関わるあらゆる業務だけでなく、まちの古民家を開放してイベントを行ったり、妙蓮寺を中心とした地域を紹介するメディアを運営するなど取り組みの幅広さに、とても驚きました。妙蓮寺駅は、大きなお寺の近くに懐かしさを感じる商店街があり、その中にも新しいお店が行くたびに少しずつ増えていて。昔ながらの街並みの中に変化を日々感じることができて、来るたびにホッと落ち着くと同時に、ワクワクする楽しい雰囲気を感じます。
松栄建設株式会社 代表取締役社長 酒井洋輔さん(以下、酒井さん):
くらしとすまいの松栄は、2025年で創業65年を迎えます。祖父の代から私で3代目なのですが、変わらず大切にしてきたことは「まず第一にお客様によろこんでもらうこと」、そして「しあわせをつくること」です。だからこそ、無理に住宅やサービスをお勧めするのではなく、お客様自身がしっかりと考えて後悔しない決断をしていただくための提案やお手伝いを私たちは行っています。そして、その対価として感謝の気持ちやお金をいただき会社が存続することができます。その対価を、またこのまちに還元することで妙蓮寺を中心とするこの地域に住む方々のしあわせが増えれば、という思いでイベントや地域メディアの運営を行ってきました。

酒井さんたちが運営する地域メディア。妙蓮寺を中心とする地域のお店や作り手のストーリー、まちの最新情報などを丁寧に取材し発信している。
たけうち:
とても素敵な考え方ですね。ひとしずくに広報サポートのご相談をくださった際は、どのような課題を感じていらっしゃいましたか。
酒井さん:
お声がけをした時は、社内に専任の広報担当者がいませんでした。私と社内の設計士の2人が、それぞれの業務と並行して広報業務を行っている状態でした。広報の経験者がおらず、何から手をつけたら良いか分からないまま、イベントがあったらSNSで発信してみたり、思いついたら自社メディアで発信してみたり。とにかくいきあたりばったりの広報活動でした。広報の考え方や、ノウハウ、実務などを学び、私たちなりの広報の「型」を社内でつくり、それに沿って広報業務を進めたいと考えていたところでした。
たけうち:
酒井さんも設計士さんもとにかくお忙しい中、広報業務もこなしていらっしゃる状態でしたね。さまざまなPRエージェンシーがある中でも、ひとしずくにお声がけくださったのはどのような経緯だったのでしょうか?
酒井さん:
妙蓮寺で本屋を営む店主さんが、ひとしずく代表のこくぼさんと知り合いで、ご紹介いただきました。ひとしずくさんの「『世界を良い方向に変えたい』という想いを持って活動する方を支援する」という考え方にとても共感しました。私も「自社の利益だけを追い求めれば良い」という考え方ではなく、その利益を少しでも社会が良くなるために役立てていきたいと思って取り組んでいるので、そのことを理解して一緒に取り組んでくださいそうだと感じました。

いきあたりばったりだった広報。「型」をつくり、計画的な情報発信を実現できた

たけうち:
まずは広報とはなにか、どういったことができるのかをお伝えし、松栄さんにマッチする方法を考えていきました。松栄さんは「オウンドメディア (自社メディア) 」に注力していたのですが、「アーンドメディア(ニュースやSNSなどのメディア)」「ペイドメディア(費用を支払い利用する広告メディア)」の使い分けや効果についてもお話しして。また具体的なプレスリリースの書き方からリリースの配信先であるメディアリストの作り方、記者クラブへの投函の仕方など、広報の実務までお伝えしました。とにかく伝えられることをお伝えしたので、吸収するのも大変だったかと思うのですが(笑)、納得感を持ちながら実務に取り組んでいただけるよう心がけていました。酒井さんは、ひとしずくと取り組んだ感想はいかがでしたか?
酒井さん:
学びがたくさんあり、とても勉強になりました。中でも一番良かったのは広報カレンダーをつくっていただいたことです。月2回、ひとしずくさんとミーティングを行い、その中で広報カレンダーの確認を毎回行いました。1年間の社内スケジュールや季節行事に照らし合わせ、それぞれのメディアで何を発信するか相談しながらスケジュールを立てました。今までのようにいきあたりばったりではなく、計画的な広報活動ができるようになりました。

たけうち:
広報カレンダーづくりをご一緒する中で、私も松栄さんの素晴らしい取り組みを知ることができました。例えば、地域の子どもたちが楽しく分かりやすく建築について学ぶことができる「子ども建築学校」のワークショップ。それまでは積極的な発信活動をしていらっしゃいませんでしたが、「ぜひ事前に発信しましょうよ!」とお伝えしてメディアリストをつくり、案内状をお送りして、メディアの方をお呼びしました。
酒井さん:
それまでは私たちのような小さな規模の会社がプレスリリースを書いたり、メディアの方を呼ぶなんて思いつきもしませんでした。でも、たけうちさんは「小さなことの積み重ねが大事」だと話してくださって。「子ども建築学校」や、私たちがコワーキングスペース「SOIL」をオープンした際もメディアの方々に声をかけ、いらしていただきました。
たけうち:
そのほか、メディアのフォロワー数やPVのデータの取り方などもお伝えしましたが、気がつけば松栄の皆さん自ら取材候補一覧をつくったり、YouTubeの投稿内容とスケジュールをスプレッドシートで共有するなど、積極的にスケジューリングなさっていました。お忙しい中でも、どんどん学んだことを活かしていらっしゃる姿を拝見し、とても嬉しく思いました。
ミッション・ビジョン・バリューを見直しリブランディングを発表。新たな一歩を踏み出した
たけうち:
ひとしずくのサポートで印象に残っている出来事はありますか?
酒井さん:
それまではいきあたりばったりだった広報が、何をどのようなスケジュールで進めていけば良いか、広報の型をつくることができたことがとても良かったです。
また、それまでは私たちの情報は、自社メディアで発信することがほとんどだったのですが、プレスリリースやメディアの方への招待状の書き方を教えていただいたことがきっかけで、NHKの『あさイチ』の取材で取り上げていただいたこともありました。その時にはたくさんの方から反響をいただきました。道ゆく人に『見たよ!見たよ!』と声をかけられて(笑)。
それまではオウンドメディア以外での発信についてはあまり積極的にはなれなかったのですが、発信にもさまざまな方法があるのだと学びになりました。
たけうち:
前例のないことにチャレンジする決断は容易ではないと思います。ですが、酒井さんが決断してくださったことは大きな変化だったと感じています!素晴らしい取り組みをしていても、「小さな会社だから」と謙虚になりすぎて、発信できないままの企業もたくさんあります。松栄さんのような熱意のある会社が広く社会に取り組みを発信できたこと、私もとても嬉しく感じます!
2024年9月26日には、あらたなミッション・ビジョン・バリューをまとめ、コーポレートロゴを変更してリブランディングを発表しましたね。リブランディングの背景にはどのような想いがあったのでしょうか?
酒井さん:
私たちは、まちにキッチンカーを誘致したり、古民家を地域の人々が集える場所として開放してイベントを行ったり、妙蓮寺を中心とするエリアを紹介するメディアを運営するなど、まちづくりにも注力してきました。少しずつまちに盛り上がりをつくり、移住者が増えるなど実績も出てきたので、このような取り組みが全国にも広まってくれたらという想いもありました。そこで、創業65周年を前にもう一度しっかりと松栄のミッション・ビジョン・バリューをまとめ、リブランディングを行うことにしました。
たけうち:
CI(コーポレート・アイデンティティ)や地域メディアのクリエイティブにも力を入れたいと伺い、ひとしずくが立ち上げたchart projectで共同代表を務める、藤田さんのデザインスタジオ『tegusu』さんを紹介したのでしたね。

ビジョン・ミッション・バリューの整理や、リニューアルしたコーポレートロゴのデザインは、妙蓮寺にあるデザインスタジオ「tegusu」が担当した。
酒井さん:
妙蓮寺を中心とするこのエリアは、華やかな観光地というよりは、穏やかな日常が広がるまちだと思います。「ハレ」というよりは「ケ」のまちですね。つい「ハレ」の方に目がいきがちですが、実は生活のほとんどは「ケ」に彩られています。そんな穏やかな日常を充実させることができれば人々はもっと幸せになるのでは、との想いで、松栄のミッションを「ケの日の幸せをつくる」と定めました。この過程にはtegusuさん、ひとしずくさんも一緒に加わって、想いを整理していただきました。私たちと同じ目線で一緒に取り組む仲間が増えたことはとても嬉しかったですね。自分たちだけではここまではできなかったと思います。
たけうち:
地域の方へ向けたリブランディングの発表会は、ほぼ満席状態でしたよね!松栄さんの日頃の取り組みが、多くの方に伝わった成果だと感じています。時折笑いが起こるなど終始和やかな雰囲気で、「妙蓮寺に住みたくなった」「昔から妙蓮寺に住んでいるから、このまちが盛り上がっていることがとても嬉しい」などのお声を直接聞くこともできました。

仲間を増やし、循環型のまちづくりをさらに広めたい
たけうち:
リブランディングにともない、コーポレートロゴを変更したほか、地域メディア「ケの日のこのまち」をローンチし、同時に「ケのまちしんぶん」も創刊しましたね。社内外からの反響はありましたでしょうか?
酒井さん:
洗練されたロゴをデザインいただき、私自身もとても気に入っています。お客さまにもデザインをお褒めいただくことが今までよりもさらに増えました。
リブランディングを行ったことにより新たなロゴのデザインを認知していただくことができ、それまではやりとりがなかったお店などの方から「ケのまちしんぶんを置かせてほしい」などのお声がけをいただくようになりました。
リブランディングに伴うアクションはまだまだ必要だと思うので、今後さらに広報に積極的に取り組もうと思っています。
たけうち:
これまでも幅広く活動されてきた酒井さんですが、今後取り組んでみたいことはどのようなことでしょうか?
酒井さん:
リブランディングに込めた想いと重なりますが、私たちと同じように循環型ビジネスに取り組む方を全国に増やしていきたいです。循環の仕組みは、昔から続いている農業のシステムから着想を得ています。種をまいて、育てて収穫して、その一部を種籾としてまた土に戻して。何千年も続いている仕組みの中に持続可能な取り組みのヒントがあります。
まちに賑わいがあるからこそ、私たちは仕事をいただくことができます。そこで得られた利益を再びまちに還元していくことで、人々やまちに幸せと豊かさを広げ続けたいと思います。

人が何かの仕事をする時、根本にあるのは「誰かの役に立ちたい、世の中の役に立ちたい」という、純粋な気持ちだと思うんです。この気持ちを大切に、これからも『ビジネスの仕組みで世の中を楽しくする』ことを続けていきます!同時に、このまちの仲間をさらに増やし、それぞれが自立しながら支え合うようなつながりを深めていきたいですね。

RECENT WORKS
社名 | ひとしずく株式会社 |
所在地 | 本社:〒231-0021 横浜市中区日本大通33番地 小田原支社:〒250-0004 神奈川県小田原市浜町3-1-40 |
電話 | 045 900 8611 |
FAX | 045 330 6853 |
メール | info@hitoshizuku.co.jp |
代表 | こくぼひろし |
設立 | 2016年3月 |
資本金 | 3,000,000円 |
事業内容 | 広報及びパブリックリレーションズ代理業 ソーシャルグッドプロジェクトの企画・制作・運営 |
顧問弁護士 | 丁絢奈(よこはま第一法律事務所) |
税務顧問 | 元小出 悟(会計事務所ユニークス) |
顧問社労士 | 社会保険労務士法人ワーク・イノベーション |