CASE 41

IUCN-J(国際自然保護連合日本委員会)

(2023年7月1日~現在)

自然保護分野の理解を前提とした支援で、効率的に広報基盤を整えられた

人間の活動により、生物多様性の喪失は年々深刻になっており、「絶滅危惧種」という言葉を耳にする機会がますます増えています。世界最新の科学的知見を集め、唯一の絶滅危惧種の世界リスト「IUCNレッドリスト」を制作しているのがIUCN(国際自然保護連合)です。自然を守るために世界がひとつになることを目指すこの組織は世界の約60カ国に拠点を持ち、その日本の拠点IUCN-Jからひとしずくへ広報のサポート依頼をいただきました。

自然保護の分野に理解があり、PR支援の仕事もできる会社は数少ない

IUCN-J(国際自然保護連合日本委員会)の道家哲平さん

ひとしずく担当 やまもとあさみ(以下、やまもと):
今回のサポートは、道家さんから私あてにいただいた一本のお電話がきっかけでした。実はその時、ワーケーション中で沖縄県石垣島の白保海岸でのんびりしていて(笑)。東京から電話だ、と思ったら道家さんから直々のお電話で。本当に驚きました!

IUCN-J(国際自然保護連合日本委員会)道家哲平さん(以下、道家さん):
リラックスしていたところ、申し訳ありませんでした(笑)。やまもとさんがWWFにいらした頃から、IUCN-Jの事務局を務める日本自然保護協会(NACS-J)のお仕事でご一緒していたので存じ上げていました。ある時、NACS-Jの会報誌の表紙にやまもとさんが撮影した海の写真が掲載されているのを拝見して。ちょうど、IUCN-Jの広報について課題を感じていた頃だったので、偶然の出来事でしたが、やまもとさんに連絡してみよう!と思い立ちました。

やまもと:
本当にありがたいタイミングでした!ご連絡くださった時、 IUCN-Jさんにはどのような課題があったのでしょうか?

道家さん:
2022年12月に、国連生物多様性条約の第15回締約国会議が行われ、世界の生物多様性を保全する、2030年までの国際目標が定められました。この目標に真剣に取り組もう、と考えた時に、日本の拠点としてまだまだ足りない部分があると感じていました。
特にIUCN-Jの活動の認知度を上げ、活動を支援してくださる方を増やし、組織の活動力を向上させる必要がありました。そのために広報の基盤を整え、意識的に、戦略的に応援してくださる方との関係をつくりたいと考えていました。自分たちだけでは手が回らないこともあり、お願いできる外部の方を探していました。

やまもと:
数ある中でも、ひとしずくにお声がけをいただいた理由は何だったのでしょうか?

道家さん:
代表のこくぼさんのことは以前から存じ上げていて、ひとしずくというPR会社を立ち上げたことも知っていました。
ひとしずくは以前、IUCN-Jの会員団体であるWWFの広報サポートも行っていたこともあり、いつか一緒にお仕事ができるといいなと思っていて。
自然保護や生物多様性に関する実情や課題などを理解し、かつPR支援を行える会社は多くはないと思います。広報支援の依頼先として、最初にひとしずくが思い浮かんで、まずは相談してみようと思いました。

やまもと:
「世の中をより良い方向に変えていきたい」という想いのある方をサポートすることが、ひとしずくの想いであり、私もずっと願っていることなので、お話をいただいた時はとても嬉しく、力になりたいと強く思いました。
私自身もNGO組織で働いた経験もあり、NGOの方々の想いの強さも理解しています。今回のプロジェクトは、その想いにより理解のあるメンバーが必要だと感じて、WWF出身で、Web制作やSNSに関する知見やスキルのあるNabeJan株式会社の中川さんも招き入れてチームを作りました。

組織の取り組みや特性への理解を前提とした支援で、スムーズに広報基盤を整えることができた

IUCN-J(国際自然保護連合日本委員会)のオフィスにて

やまもと:
まずは、情報発信のベースとなる広報の基盤作りを行った後、目標を決めて支援者を集めるためのコンテンツ制作を伴走支援しました。実際に取り組んでみた感想はいかがでしたか?

道家さん:
取り組んで良かったと思っています。やってみないと分からないことが沢山ありました。例えば、当初は最も低い寄付金額の支援者を増やそうと目標を立てていたのですが、取り組んでいるうちに、それを超える金額を寄付してくださる支援者が予想以上にいらっしゃることに気づいて。それ以降は、支援者の数だけでなく寄付金額を増やすことも意識した広報活動が行えました。
また、事務局は私を含めた実質2名だけなので、以前は新しいことに取り組むにしても非常に時間がかかってしまう状態でした。2030年へ向けていかに早く取り組みをスタートできるかがとても大切だったので、スピード感を持って広報活動の強化に取り組めたことは、大きな成果でした。

やまもと:
色々な活動を並行して広報基盤を整えると、通常より時間がかかってしまったり、統一性が失われてしまったりするので、2ヶ月という期間を決めて、集中して基盤作りができたのは良かったと思います。私たちの支援から離れた後も自走できるような広報基盤をつくることを意識し、議論を進めました。

道家さん:
広報基盤が定まってから、IUCN-JのSNSを立ち上げ発信を始めましたが、徐々に投稿のコツが掴めてきましたし、大きなトラブルもなくスムーズに運営できています。言葉遣いのトーンから投稿のコンテンツまで細かにサポートいただけて、私たちも安心して取り組めました。「これでいいのかな?」と自分たちで迷いながらやるよりも、「これでいこう!」と外部の方にお声かけいただきながら歩み続けるのは、安心感が全然違いました。

やまもと:
私たちも今までのノウハウを活かして、Webや書籍では得られないようなポイントや非営利団体向けのツールやサービスまでお伝えできたのではと思っています。SNSで支援のお願いを初めて投稿した際は、大きな反響をいただき、新たな支援者につながった時には非常に手応えを感じました。道家さんのお人柄もありますし、IUCNを応援したいと思っている方はまだまだいるのだと確信しました。

道家さん:
新たに支援してくださる方の中には、以前から関わりのある方もいらっしゃり、これまで繋がりのある方々はやはり応援し続けてくださるということを実感できました。一方で、IUCNに初めて出会い、共感してくださる方も多く、支援の広がりの可能性を私も感じています。

やまもと:
これまでのサポートを通じて、ひとしずくにはどのような印象をお持ちですか?

道家さん:
IUCNは会員団体や専門委員から成るネットワーク団体です。組織の成り立ちも少し特殊ですし、取り組み内容も幅広いため、理解していただくのには時間がある程度必要です。ところが、ひとしずくの皆さんは、サポートをスタートした時点ですでに十分にそのバックグラウンドを理解してくださっていたのでとてもスムーズにスピード感を持って、やるべきことを進められました。
代表のこくぼさん、やまもとさんのお人柄もあり、「外部の関係者」というよりも、「同じチームの仲間」として取り組んでくださり、チームとしての一体感も感じていました。

やまもと:
ありがとうございます、私もIUCN-Jの一員として楽しんで取り組めたことに、感謝しています。お褒めの言葉もいただいたのですが、私たちのサポートについて足りなかった点もあったと思います。特に支援者数の増加に関しては、当初立てていた目標数値に達しなかったことはとても心残りでした。今後、ひとしずくのサポートについて改善が必要な点がありましたら是非教えてください。

道家さん:
私たちもやっていく中で気づいた改善点なのですが、最初にIUCN-Jの概要と支援のお願いを記載したハガキサイズのカードをサポートいただきながら制作しました。先日、そちらのカードの文字が小さすぎる、と言われまして。制作の時点は、どのような方が支援者になってくださるか未知数でもあったので、手に取ってくださる方のペルソナをあまり考えていませんでした。今回の取り組みで、50代以上の支援者もやはり多くいらっしゃることが分かりました。今回得た感触を反映させて、多様な方に見ていただける新たなツールを製作してみようと思います。

やまもと:
ありがとうございます。いろいろな制約の中で今回は制作しましたが、いただいたお声や、今回の経験で得たものは、次の制作時には是非活かしたい点ですね。

道家さん:
目標はチーム全体で達成していくものだと思うので、私たちも他の業務と並行しながらだったのでどうしても手が回らない点がたくさんあったなと思います。腰をしっかり据えて広報に取り組める体制を引き続き整えていきたいと考えています。

IUCN-J親善大使のイルカさん、気象予報士の井田寛子さんを招いてのチャリティーイベントは、参加者同士のコミュニケーションが自然と生まれ、支援が増える機会となった。

広報関連の取り組みを他の組織にもオープンにし、ネイチャーポジティブな未来を実現したい

やまもと:
「ネイチャーポジティブ」という言葉を耳にする機会も増えてきており、これからますますIUCNさんの活動が注目されていくと思います。これからの未来に向けて、取り組みたいことや、ひとしずくがご一緒できそうなことがありましたら是非教えてください。

道家さん:
今回はIUCN-Jとひとしずくのチームで取り組みましたが、それに加えてIUCN-Jの会員団体からもメンバーに加わっていただいて、一緒に何かできたらとてもいいなと思っています。自然保護の問題は、1つのNGOだけでは解決が難しいものです。特に普及啓発や自然の価値や危機を伝えるには、それぞれの団体が持つ視点から、多角的に伝えていくことが必要です。例えば、海外では2週間に1回30分程度、さまざまな環境保護団体がミーティングを行なっています。今度国際会議でどんな発信をするか、SNSではどのような発信を行う予定なのかなどを共有しながらそれぞれのコミュニケーションを行っていて。同じようなことが日本でもできると良いなと思っています。

やまもと:
以前、環境課題に取り組む団体を対象にしたIUCN-Jさん主催の交流会がありましたよね。私も参加しましたが、非常に勉強になりましたし、良い繋がりができました。組織は違っても、目指す未来は同じだと思うので、お互いのキャンペーンをサポートしあったり、SNSでお互いの発信をシェアし合えたら、より素敵ですよね。

道家さん:
そうですね。同じ課題に取り組む組織は、競合ではなく仲間だと私は捉えています。引き続きIUCN-Jの支援者を増やしていく取り組みは続けていきたいのですが、上手くいったらそのプロセスをオープンにして、ノウハウなども伝えていきたいです。

やまもと:
ネットワーク団体であるIUCN-Jさんらしい発想ですね!

道家さん:
IUCNの会員団体の方々の抱える課題には、共通のものも多くあると思います。人員不足の中、まだまだ手探りで取り組んでいる団体も多くあると認識しています。私たちの成功例も失敗事例も出していくことで、ネットワーク全体の底上げにもなります。それから、今後の課題として「ネイチャーポジティブ」の認知度を向上させ、行動に結びつけていく必要がまだまだあると感じています。

やまもと:
ネイチャーポジティブとは、「生物多様性の喪失を食い止めるだけではなく、回復への道筋までを考えて行動する」ことを指す言葉ですね。

道家さん:
はい。海外と日本を比べると「ネイチャーポジティブ」の認知度にはかなりのギャップがあります。例えば、「カーボンニュートラル」と「ネイチャーポジティブ」という用語。英語でのGoogle検索数は、だいたい2:1くらいで半数なのに対し、日本語での検索だと、100:1くらい。検索数だけでは認知度は測れませんが、日本では「ネイチャーポジティブ」は「カーボンニュートラル」に比べて10分の1以下の検索数です。
今は本当にネガティブな状態が続いていて、このままではいけないという危機感や現状を伝える言葉でもあります。最近は、少しずつですが、「一緒にネイチャーポジティブを広めていきましょう」と言ってくださる声も増えてきています。たくさんの方を巻き込みながら、面白い取り組みも増やしながら取り組んでいきたいですね。

撮影:ほりごめひろゆき 編集:つじはらまゆき

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