CASE 30

流通経済大学ダイバーシティ共創センター

(2022年2月1日~2023年3月31日)

先が見えなかった組織の立ち上げ時から、
変化する状況に応じたサポートを受け、未来が見えてきた

流通経済大学では2022年4月、多様性(ダイバーシティ)を尊重し、“誰一人取り残さない”キャンパスを共に創るため、「ダイバーシティ共創センター」が設立されました。設立当初、センターの運営に関わる教職員・学生と「これからどんなことに取り組んでいくべきか」という対話を始める以前から株式会社フューチャーセッションズのご紹介で、内部の体制づくりについてサポートを行いました。また、ご一緒させていただくうちに、内部のことだけでなく、外部への情報発信についてもご相談をいただき、支援の内容も変化していきました。新しい組織の立ち上げの際に苦労した点や、ひとしずくがお役に立てた点などについて、お話をお伺いしました。

当初は、組織について自分たちでも言語化できない状況だった

流通経済大学ダイバーシティ共創センターセンター長 三木ひろみ先生

ひとしずく担当 たけうち ゆき(以下、たけうち):
ダイバーシティ共創センターをお手伝いさせていただいて、1年が経ちます。ひとしずくにお声かけをいただく前はどのような課題があったのか、お聞かせいただけますでしょうか。

流通経済大学ダイバーシティ共創センターセンター長 三木ひろみ先生(以下、三木先生):
初期の頃は、とにかく「伝わらない感」を抱えていました。そのことで、こくぼさんにたくさん相談したり、お願いをしてばかりでしたね。
当初は、学内に「ダイバーシティ共創センター」ができたけれど、私を含めたセンターのメンバーたちも、これから何に取り組んでいくのか、はっきりと先が見えていない状態でした。

というのも、私はセンター長になる前から、ダイバーシティについて考えがありました。それは、ダイバーシティという言葉が女性、障がいのある人々、LGBTQ+の方々のことだけを指しているのではないということ。さらに、一方的に支援する、あるいは一方的に支援されるだけの人間は存在しないということです。個性の数だけ、一人ひとりが必要とするサポートも違います。大学が目指す、「誰一人取り残さないキャンパス」を実現し、それを持続可能にしていくためには、学内の全員が互いに支援したり、されたりすることが必要だと考えていました。だからこそ、センターは特定の誰かだけを支援する機関であってはならないと考えていましたし、私がセンターの皆に指示してアクションを起こすことも違うと思っていました。センターの役割は、キャンパスに関わる多様な人たちが未来について話し合う場をつくり、「今、キャンパスにはどんなアクションが必要なのか」を一緒に考え、アクションを共に起こしていくことだと思っていたんです。

ところが、私の考えはなかなかセンターの内外に伝わらない状況でした。さらには、「ダイバーシティに関することは全部センターの方々が解決してくれるんですよね」と外部の方にも言われてしまう始末でした。

ひとしずくさんは、数々の企業や機関の方と一緒に社会課題の解決に取り組んでいるということで、当初はセンターの広報をお願いしたいとお声がけをしたのですが、センターの体制も定まっておらず、広報をお願いできる状況ではありませんでした。

そこでまずは、センター内のメンバーに私の考えを理解してもらうことが最重要だと捉え、そのお手伝いをひとしずくさんにお願いしました。

たけうち:
当初は、運営メンバーの方も、センターがどのようなことをやる場所なのか、ご自身でも言語化できていなくて、戸惑っているように感じていました。

三木先生:
センターの皆も、私がセンターの方針をつくり、一人ひとりがやるべきことを指示するだろうと当初は思っていて。「先生、私は何をすればいいんですか?」と聞かれることも多々ありました。でも、真にダイバーシティを実現するためには、私がトップダウンでアクションについて指示をしても持続していかないと感じていたので、どうしていけばいいのか一緒に考えていきたいということを、とにかく皆に伝えていました。

ひとしずくさんには、最初に依頼したはずの内容がどんどん変化して申し訳なかったです。

たけうち:
とんでもないです。先生が大切にされていたのは、組織をトップダウンで動かすのではなく、フラットに多様な人が意見を出し合ってアクションを起こしていくことでした。今までにない組織のあり方だったので、センターの内外での理解に時間がかかったんだと思います。

センターを取り巻く状況の変化に応じ、支援内容が変化した

「SDGsや”誰一人取り残さない”キャンパスづくりは、すぐに成果が出るものではなく、コツコツとした積み重ねが大切」

たけうち:
ひとしずくが関わったことで、良かったと思う点や、ひとしずくの関わり方において改善が必要ではないかと感じた点があれば教えてください。

三木先生:
私が当初ひとしずくさんに期待していたのは、内部のメンバーに私の考えを伝えるためのキーワードやメッセージ、ビジュアルの作成などでした。
ところが、ひとしずくさんが最初に実行したのはセンターのメンバーの行動計画・役割分担・定期的なミーティングスケジュールの作成など細かい事務的なことばかり。「こんなことなら自分たちでできるんじゃないかな」と不安に思ったこともありました。

でも、ひとしずくさんと取り組むうちに、センター長の私が考えていることと、センターを構成するメンバーの職員さんや学生さんの抱えている困難は違うということも明らかになってきました。
ひとしずくの方々が私たちの中に入って「次はこれをやりましょう」「分からないことがあったら聞いてくださいね」と職員さんや学生さんに声をかけてくださったことで、彼らの不安が取り除かれていくのを感じました。そして、日々のルーティンに取り組んでいく中で、メンバー自ら色々なことに気づいていく様子も見受けられました。

たけうち:
1年ほどご一緒させていただきましたが、センター内にはどのような変化があったでしょうか。

三木先生:
先日センターが主催したイベントで、とある職員が、集まった方々の前でダイバーシティ共創センターの説明をした時に、「私たちはこういうことをやっています!」と自信をもって話していたんです。その考え方は、まさに私と一致していて、「わーすごい!その通り!」と感動しながら聞いていました。1年経ち、私たちは自分たちの取り組んでいることをしっかり言語化できるまでになりました。本当に大きな変化です。私自身が考えをメンバーに何回も直接伝えたわけではなかったけれど、その職員さんが自分なりに考えて何度も言語化してみたり、ひとしずくさんを経由して私の考えを聞くことで磨き上げられたフレーズだったのだと思います。

たけうち:
その時は、私たちも「ここまで来ることができた!」ととても嬉しい気持ちになりました。その後、ひとしずくへ期待することに変化はありましたか?

三木先生:
はい。「内部に伝える」ということがある程度できた後は、センターでやっていることを、どう外部に発信していくかという悩みも出てきて。そのことをひとしずくさんに相談したら、活動を外部に発信するためのアドバイスもどんどんして下さいました。そして、ひとしずくさんの支援内容も、内部に対することから外部発信に関することにシフトしていきました。もともと、「内部に伝える」ということをお願いしていたはずが、「外部にどう発信するか」という相談内容に変化したので、私たちも少し混乱してしまいました。

たけうち:
私たちも、貴校の広報の考え方について理解が浅い部分があり、試行錯誤させていただいたので、ご迷惑をおかけした点もあるかもしれません。その中でたどり着いた答えの一つが、「センターのメンバー一人ひとりの想いやバックグラウンド、その魅力を掘り下げて、ストーリーを記事の中で伝えていく」ということでしたね。

三木先生:
途中で支援の内容が変わったことは良かったのか悪かったのか分かりませんが、外部に私たちの活動を発信することで、内部での理解がより深まるということもあったので、結果的には良かったと思っています。でも、依頼内容が変化している最中では、それが正しい判断なのかは分かりませんでした。

センター内の想いが一つになるにつれ、外部との繋がりが増えた

2023年3月6日に新松戸キャンパスで開催された「感謝交流セッション」

たけうち:
今後、ダイバーシティ共創センターが取り組んでいきたいことや、弊社に期待することについて教えてください。

三木先生:
センターが設立されて1年経って、少しずつ私たちの活動があちこちで知られ始め、次のフェーズに来たことを実感しています。世の中で社会課題の解決に取り組んでいる様々な方々が、私たちの取り組みについて話を聞きに来て、「そんな取り組み知りませんでした」「すごいですね」と言っていただける時は本当に嬉しいです。一方で私たちも、外部の方から他の組織の取り組みについて聞いて学ぶ機会に繋がっています。さらに色々なことにチャレンジして、新しい繋がりができると、新たなアクションにつながると思います。それをひとしずくさんとご一緒できたらいいですね。

たけうち:
1年間、コツコツと積み上げてきた末に見えてきた未来ですね。私たちも今回改めて、学内で伝えていく難しさを実感しました。また、センター開設からご一緒させていただき、その大変さを共有できたことはとても光栄に思っています。色々試行錯誤はあったものの、ようやくひとしずくがお役に立ててきたと感じる部分があるので、その強みを活かしながら、またご一緒させていただけたら嬉しいです。

三木先生:
はい、そうですね。大学って企業と違って特殊な環境に思えるかもしれませんが、その分自由なところもあります。例えば、企業では利益が見込めない状況で実験的に何かを行うことは難しいと思います。けれど、大学では「まずは実験的にやってみて、それが学生たちの経験になれば良いよね」という考え方もあります。ダイバーシティ共創センターで行っていることもそうです。ここの取り組みの中で、上手くいったこともそうでないことも、企業や大学以外のフィールドで役立てられる機会が多いにあるのではないでしょうか。これからは、学内以外にも、いろいろな方と繋がりながら新しいチャレンジをしていけたら、嬉しいですね。

撮影:ほりごめひろゆき 編集:つじはらまゆき

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