CASE 28

神奈川県住宅供給公社

(2021年12月10日~2022年3月31日)

サポートをきっかけに、メンバー間の自主的な動きが少しずつ広まった

神奈川県横浜市旭区に位置する横浜若葉台では、丘陵地の豊かな森や自然の生態系を活かしながら、高層住宅や様々な施設を計画的に配置した郊外住宅地の理想形として計画・開発され、1979年から入居が開始。以来、様々な組織や住民グループが自主的によりよいまちづくりに携わってきた一方で、入居から約40年が経過、少子高齢化にともなう需要の低下等により、まちの持続的な発展が大きな課題として見えてきました。取り組みのひとつとして、まちのエンジン機能とも言える商店街の活性化のため、商店街の店主・店員、貸主、利用者(住民)をメンバーとした「商店街活性化部会」が、2021年に発足しました。様々な関係者が意見を交わすコミュニティ形成の軸となる部会の運営サポートについて、ひとしずくにお声がけいただき、住民参加イベント・商店の方へむけた勉強会のサポートも行いました。立場も様々なメンバーが集まる部会の運営を通じて、起こった変化や気づきについてお話を伺いました。

立場も様々なメンバーが参加する商店街活性化部会をまとめる第三者の存在が必要だった

神奈川県住宅供給公社の松井さん、一般財団法人若葉台まちづくりセンターの丸野さん

ひとしずく担当 とおやまあつこ(以下、とおやま):
ひとしずくにお声かけくださる前段階として、横浜若葉台にはどのような課題があったのでしょうか。

神奈川県住宅供給公社 賃貸事業部 若葉台創世課 係長 松井陽子さん(以下、松井さん)
サポートをお願いした2021年は、若葉台団地は築43年、商店街は40年目を迎えていました。入居者の高齢化も進み、商店の利用者が減少するなど、今後どう持続していくかが課題となっていました。2017年から地域として「みらいづくりプラン」を策定、自治会や管理組合、NPO団体や住民など地域に関わる方々みんなで、まちの持続という目標に向かって現在も動いているところです。プラン中の取り組みの一つとして、中心街にある商店街の活性化が非常に重要だという認識が当初からあり、2021年には「商店街活性化部会」が発足しました。

とおやま:
部会の運営にあたり、どのような課題がありましたか。

松井さん:
以前は、「商店街は商店が中心となって盛り上がるべき」というような空気がありましたが、購買によって商店を支える消費者=住民の存在をはじめとした、商店に関わる全ての関係者が意見を交わすことが重要だという考え方に変わりました。商店の店主・店員だけでなく、地域の住民、開発者である神奈川県住宅供給公社、商店の貸主・管理会社である若葉台まちづくりセンターも加わり、様々な立場の人々が集まる場として部会が発足しました。

前述の通り、構成メンバーの立場も様々であるがゆえ、全員がフラットな立場で議論することや、意見をまとめる上での困難も予想されていました。そこで、第三者としての視点で会の運営をサポートしてくださる、実績を備えた会社を探していました。
以前、ひとしずくさんがサポートしていた旭区の方から、「横浜市のいくつかの商店街でワークショップをひとしずくさんにやっていただいた際、とてもスムーズに進行してくれました」と伺い、私たちもサポートをお願いすることに決めました。

とおやま:
ひとしずくに業務をお願いする際に、どのようなことを期待していましたか?

一般財団法人若葉台まちづくりセンター 管理事業部 兼 総務部 部長代理 丸野豊さん(以下、丸野さん):
部会において、自発的に議論が持続して交わされる仕組みづくりがまずは重要だと考えていました。商店街が単にモノを売る場としてだけではなく、コミュニティ形成の軸として機能してほしいという思いもありました。
一方で、集まった人々の間には長年の関係性があり、会議の中でお互いに、意見を交換するというよりも要望を伝え合うことに終始してしまう場面もあり、みんなで共同してアクションを起こすための議論になりにくいと感じていました。そのような状況下で、円滑に議論をすすめることができる仕組みづくりをしていただけることを期待して、会のファシリテートの外部委託に踏み切りました。それまでは、外部に業務を委託する機会がなかったので、その事情も理解した上で業務の進め方を提案していただくことも期待していました。

松井さん:
当初はひとしずくさんがどのようなことが得意なのか分からない中で、「得意だったらいいな」と思う点がありました。1つ目は、自分たちでは気づかない商店街の魅力を第三者ならではの視点で探していただくこと。2つ目は、「自発力」を養い、具体的なアクションを起こすために一緒に動いていただくことです。時代の変化により、商店街も単に外部の方を頼るのではなく、関係者が自ら動いて厳しい状況を打破しなければいけないというフェーズに入っていましたので、第三者目線で行動を起こしていただけると良いなという思いがありました。

初めてのサポート依頼、もっとコミュニケーションが必要だと感じた

ショッピングタウンわかばの様子

とおやま:
ひとしずくのサポート内容について、良かったと感じる点について教えてください。

松井さん:
住民の方を招いてワークショップを行った際は、ひとしずくさんにファシリテートしていただきました。想定していた以上に多様な意見がありましたが、全ての意見に対して、丁寧に話を聞き、部会に参加していない方々からも思いの丈を引き出していたのはさすがだと思いました。

とおやま:
ワークショップに参加した住民の方々が、時間も押してしまうくらい積極的に意見をだしてくださる様子を見て、私も嬉しく感じていました。
逆に、ひとしずくの業務について改善が必要だと感じた点について教えてください。

丸野さん:
外部の方にサポートをお願いすることが初めてで、何をどうお願いすればいいのか分からない状態だったので、私たち部会の運営事務局とひとしずくさんの業務をどのように切り分け、どのように進めていくかについてもっとアドバイスやコミュニケーションがあると良かったと思います。こちらからも、どのようなことをしてほしいという要望をもっと伝えれば良かったと反省しています。一方で、ひとしずくさんのおかげで目的に向けて前進できたので、とてもありがたく感じています。

松井さん:
商店街の方々と、部会の事務局であるまちづくりセンターの間には、長年育まれた関係性があります。そのせいで部会のファシリテートにおいて、ひとしずくさんと事務局、どちらにイニシアティブがあるのかが曖昧になってしまいました。また、部会は時間切れになってしまうことが多かったのですが、ひとしずくさんの経験を活かして、他の商店街での参考になる取り組み事例など、具体的アクションに直結するお話をもっと部会の中でお聞きできると良かったと思います。

とおやま:
私たちも勉強会やワークショップの実施など、アクションを実行することに注力するあまり、事務局のみなさまとのコミュニケーションが足りなかったと反省しています。会議についても、実施前に事務局のみなさまとミーティングをして進行について作戦を練っていましたが、もっと打ち合わせが必要だったと感じています。

イベントや勉強会をきっかけに、自主的な動きや地域との交流の機会が増えてきた

2017年に策定された「みらいづくりプラン」

とおやま:
良かった点や改善点についても率直にお話くださり、ありがとうございます。ひとしずくと協働してみて、課題解決につながったと感じる点はありますでしょうか。

丸野さん:
ひとしずくさんにサポートをお願いしたのは、部会メンバーの自主的な行動につなげたいという思いからでした。部会メンバーや希望者に対して勉強会を実施していただいたことがきっかけで、少人数ではありますが自主的に勉強会が行われるなど、参加者に意識の変化があったことはとても良かったと感じています。

とおやま:
今も勉強会は継続されているのでしょうか?

丸野さん:
6〜7名ほどではありますが、少人数で開催されるなど、少しずつ前進しています。今は商店街メンバーのみですが、これから地域の方々を巻き込む形で発展していくといいなと思っています。

松井さん:
住民の方々も、今までは「商店街は商店街、自分たちが意見をいう場は無い」という意識だったのが、ワークショップを開催していただいたことにより、意見を伝えたいと感じていた住民の方が思いの丈を話し、それを聞く機会が生まれたのはとても良かったです。

とおやま:
その後、商店街と住民の方とのコミュニケーションの機会はありますか?

松井さん:
今年は商店街が40周年を迎えるので、住民の方が参加できるイベントを行いたいという意見が商店街のメンバーから出ているので検討しているところです。住民の方々も商店を盛り上げる一員であるという意識が高まっているのを感じています。

とおやま:
そのような動きが起こっていることはとても嬉しいです。
40年という節目を迎える商店街ですが、これから取り組んでいきたいことについて教えてください。

丸野さん:
新型コロナウイルスの流行も少しずつ下火になってきて、まちのイベントも徐々にやっていこうという空気があります。何をするにも3年ぶりなので、その分地域の人々のイベントへのモチベーションも高まっています。このことがイベントへの参加など大きな動きにつながると良いなと思っています。

松井さん:
商店街の方々がモチベーション高く取り組んでいらっしゃる一方で、まだまだ実現できていないことがたくさんあるので、引き続き一つひとつ向き合っていきたいです。先日、商店街メンバーが中心となり、住民の方々を交えたイベントが開催されました。住民の方々が食を楽しめる出店や、子どもたちに向けた企画などもあり、少しずつ悩みながらも地域を巻き込んで前進しているところです。

丸野さん:
同イベントでは、地域の「母の会」の方々からフリーマーケットをやりたいという要望を受け、商店街の方々と住民の方が一緒にイベントを行う機会にもなりました。地域の人々が商店街に愛着を持ち、一緒に生活しているんだという意識がより高まることを願っています。

後日談:
「商店街40周年イベント」は11月下旬に開催され、商店街と住民(自治会)、まちづくりセンターが連携することで、「若葉台花火大会」とビアガーデンは大盛況のうちに終了したとのことでした。

撮影:ほりごめひろゆき 編集:つじはらまゆき

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