CASE 23

株式会社ココロワークス

(2018年5月~)

手軽かつ臨場感のあるバーチャルリアリティでメディアトレーニングを
実施できるサービス「NPO向けメディアトレーニング」を共同開発

「メディアトレーニング」とは、組織のなかでトップや広報責任者を始め、メディアの前や公の場で発言をする機会のある人が意識や立ち居振る舞いを学ぶトレーニングのことです。近年、不祥事などネガティブな事態に対応しなければならない事例が増えている反面、NPO・NGO業界においては、メディアトレーニングの機会が少ないという課題がありました。そこで、ひとしずくは、リスクマネジメントコンサルタントを派遣することなく、手軽かつ臨場感のあるバーチャルリアリティ(以下、VR)でメディアトレーニングを実施できるサービス「NPO向けメディアトレーニングVR Powered by バーチャル・センセイ」を開発。共同開発した株式会社ココロワークスの小松さんとともに、開発の過程を振り返りました。

NPO・NGOの危機管理意識を高めたい。VR研修サービスを開発し、時間や場所、コストのハードルをクリア

株式会社ココロワークス 代表取締役 小松英司さん

ひとしずく担当 こくぼ ひろし(以下、こくぼ):
今回、弊社は、ココロワークスさんとともに、NPO・NGOを含むソーシャルセクターを対象とした、バーチャルリアリティ(以下、VR)でメディアトレーニングを行うサービス「NPO向けメディアトレーニングVR Powered by バーチャル・センセイ」を共同開発しました。

まず、ココロワークスさんのVRコンテンツ制作事業とVRの特長について、改めてご紹介いただけますか?

株式会社ココロワークス 代表取締役 小松英司さん(以下、小松さん):
デジタルコンテンツ制作事業を展開する我々は、2014年にVRサービスを提供開始して以降、地域プロモーションのためのパノラマ映像や医療用プログラム、研修用プログラムなど、VRを用いたさまざまなコンテンツ制作を行ってきました。

VRとは、コンピュータグラフィックス(CG)を駆使した映像を専用のゴーグルを着用して見ることで、あたかも目の前の光景かのように臨場感のある体験ができる仮想現実を指します。

その大きな特長は、手軽さです。たとえば、会場使用料や派遣講師の謝礼など高額な費用が発生しがちな研修も、専用ゴーグルひとつあれば、時間や場所に縛られることなく、いつでもどこでも低価格で受けられるんです。

こくぼ:
2019年4月にサービス提供開始した「NPO向けメディアトレーニングVR Powered by バーチャル・センセイ」は、まさにその研修用として開発したサービスですね。

開発に至るまでの経緯としては、2017年に開催された「つなぐ人フォーラム」で、小松さんと私が同じ部屋で過ごしたことがそもそもの始まりでした。

その後、ココロワークスさんの「Oh!川柳」という川柳大喜利によるメンタルヘルスケアサービスの後方支援をご依頼いただくなど、お仕事をご一緒させていただくなかで、私が以前から構想していた「NPO向けにメディアトレーニングをしたい」というお話をしたんですよね。

すると、小松さんから、ローンチ予定だった「バーチャル・センセイ」をご紹介いただき、第一弾として、クライシスコミュニケーションの方向で開発しようという流れになりました。

小松さん:
こくぼさんは、NPO向けのメディアトレーニングのテーマとして、「リスクマネジメント」を当初から挙げていましたね。

こくぼ:
2018年は、NPO・NGO業界において、リスクに関するさまざまな事案が発生したこともあり、危機管理意識を周知徹底する重要性が高まっていました。

しかし、各団体でそれぞれの取り組みが実施されているものの、NPO・NGOを対象とした具体的な事案をベースとしたメディアトレーニングの機会は少なく、サービスも開発されていないという現状がありました。

小松さん:
予算が少ないNPOやNGOが手軽にリスクマネジメントを学べる手段として、VRによるメディアトレーニングは最適だったわけですね。

こくぼ:
はい。とてもいいタイミングで、共同開発させていただくことができ、ありがとうございました。

トレーニング体験者が引き込まれるVR動画をチーム一丸となって制作。テンポよくリスクマネジメントを学べる仕上がりに

こくぼ:
「NPO向けメディアトレーニングVR Powered by バーチャル・センセイ」の制作にあたり、危機管理コンサルタントの第一人者であるピーアール・ジャパン株式会社の中村峰介さんをご紹介して、監修をお願いしました。

三者で協議した結果、サービスは3部構成(オンラインでのレクチャー、VRによるロールプレイング、研修後のコミュニティ参加)となりましたね。

トレーニング体験者は、初めに、中村さんによる危機管理の基本概念を解説した動画を視聴します。次に、VRのゴーグルを装着して、架空の団体の広報担当者になったという設定で、セクハラ事例によるリスク対応の疑似体験をしていただくという内容ですが、制作過程で小松さんが重要視されていた点はありましたか?

小松さん:
なるべく、トレーニング体験者を飽きさせないように意識しましたね。レクチャー動画自体、真面目な話がずっと続くので、体験者の集中力がもたないかなと感じたんです。そこで、途中途中にアニメーションスライドを挟み、進行役としてキャラクター化した「バーチャル・センセイ」を登場させて、ポイントを分かりやすくまとめました。

こくぼ:
講師の中村さんをモデルにした「バーチャル・センセイ」のビジュアルは、ご本人の特徴をとらえていて、とても親しみやすいキャラクターになっていましたよね。アニメーションスライドやVR動画のシナリオは中村さんが典型的なリスクを盛り込んだ原案を考えてくださり、弊社はNPOの実情を知る立場として、小松さんはVRコンテンツ制作者として、それぞれの観点からチェックして細部を詰めていきました。

小松さん:
三者三様のキャリアとスキルを活かしたチームワークがとれていましたよね。

こくぼ:
本当にそうですね。とても良いチームワークで開発ができました。そのほかに、何か工夫された点はありましたか?

小松さん:
VRについては、高画質でありながら、データ量が重くならないように気をつけました。全編動画を流すのではなく、一部分は動画を撮影し、その他は背景に静止画を使ってストーリーを展開させていくなど、新しい試みができたと思います。

こくぼ:
VR動画の撮影は、さまざまな工夫をして全員で一丸となって取り組みましたね。撮影場所は、私が長年お世話になっているNPOサポートセンターさんにお借りして、出演者は中村さん、小松さんを始め、弊社のスタッフも総出で演技に挑戦するなど、力を尽くしました。

小松さん:
共同開発した企業の方々と一緒に動画に出演したのは、初めての経験でした(笑)

こくぼ:
動画のナレーションも担当してくださった中村さんは趣味で落語をされていらっしゃるので、情感たっぷりな語りも素晴らしかったですよね。

小松さん:
とてもお上手でしたよね。おかげさまで、想定していたよりもスムーズに進みました。

こくぼ:
完成後、ご覧になった社内の方々の反応はいかがでしたか?

小松さん:
スタッフは皆、「面白いものができた!」と喜んでいましたね。制作事例のノウハウを蓄えるなかでも、大きな学びになりました。

VR動画には関係者が出演。メディアが事務所を突撃取材する様子などを演じ、トレーニング体験者の危機意識を高めた

こくぼ:
満足のいくものが開発できてよかったです。

サービス開始前には、「NPO向け危機管理講座&メディアトレーニングVR体験会」を開催しました。複数のNPO団体の方々が実際に体験される様子をご覧になって、気づきはありましたか?

小松さん:
VRを体験するのが初めての方もいらしたので、ゴーグル装着時など操作面でやや戸惑う場面は見受けられました。

また、皆さん、真面目方ばかりでしたので、熱心にメモをとろうとされるのですが、VR体験中は手元が見られないため、メモがとれない。その点に関しては、研修で活用することを踏まえて改善していきたいですね。

一方で、VR体験には、ゴーグルの中の世界に集中できるというメリットがあります。ほかのことができないので、集中せざるを得ないというか。そういう意味では、学習効果が高いサービスだと思いますね。

サービス体験者からは、NPO・NGO業界に特化した内容を評価する声が。今後も業界全体の導入を目指す

「NPO向け危機管理講座&メディアトレーニングVR体験会」では、「ほかの人にも薦めたい」という声も上がった

こくぼ:
「NPO向けメディアトレーニングVR Powered by バーチャル・センセイ」の開発は、ココロワークスさんにとって、どのような意義がありましたか?

小松さん:
我々は、これまで企業や自治体とのお付き合いはありましたが、NPOとのつながりはなかったんです。そのため、NPOやNGOが何を欲しているのか、どんなことに気をつけるべきかといった知見はまったくありませんでした。

だから、こくぼさんからアドバイスをいただきながら、一緒に開発を進められたという点は、とてもありがたかったですね。私自身、とても勉強になりました。

こくぼ:
そのようにおっしゃっていただき、とてもうれしいです。メンタルトレーニング体験者からも、「NPO・NGO業界に特化した具体的な内容で、実感をもって学ぶことができた」という評価をいただきました。

今後、多くの団体にサービスを導入していただくためには、何がカギになると思われますか?

小松さん:
一般的に、企業や人がお金を払う対象は、実際に目で見えているものや今目の前で起きていることが多いと思います。

しかし、“トラブルを未然に防ぐためのリスクマネジメント”という、まだ起こっていないことに対する投資はハードルが高くなりがちです。

そういう意味では、サービスのプロモーションについて、もっと考えていかなければならないと感じました。

こくぼ:
そうですね。ちなみに、「バーチャル・センセイ」の次作のテーマは決まっているのですか?

小松さん:
第2弾は、我々が創業以来取り組んできたメンタルヘルスケアをテーマにしたトレーニングをローンチする予定です。

また、実写以外のサービスも検討したいですね。オンラインツールを使ってミーティングをすることが日常的になった現在でも、人と人が関係性を築くときは、対面で話すことが基本だと思います。

ただし、メンタルヘルスケアの分野では、「直接顔を合わせたくない」という人も多いんです。だからこそ、たとえば、バーチャルな空間のなかで、自分のアバターを動かして他人のアバターとコミュニケーションをとり、ユーザー同士で一体感を味わえるようなサービスも開発したいですね。

こくぼ:
デジタルネイティブとされる若い世代を中心に、需要がありそうですね。ココロワークスさんの新サービスを楽しみにしています。

 
一部写真提供:株式会社ココロワークス

RECENT WORKS

社名ひとしずく株式会社
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大磯オフィス:神奈川県中郡大磯町大磯636-1
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メールinfo@hitoshizuku.co.jp
代表こくぼひろし
設立2016年3月
資本金3,000,000円
事業内容広報及びパブリックリレーションズ代理業
ソーシャルグッドプロジェクトの企画・制作・運営
顧問弁護士丁絢奈(よこはま第一法律事務所)
税務顧問元小出 悟(会計事務所ユニークス)
顧問社労士社会保険労務士法人ワーク・イノベーション