CASE 21

認定特定非営利活動法人カタリバ

(2020年6月10日~2020年6月22日)

困窮世帯のオンライン学習支援
「あの子にまなびをつなぐプロジェクト」記者会見をサポート。
コロナ禍に苦しむ子どもたちの後方支援に取り組む

2020年春、世界中で新型コロナウイルス感染症が蔓延し、未曾有の事態に陥りました。窮地に立たされた人々を救うために、さまざまな企業や団体が支援策を打ち出すなか、日本の子どもたちのために立ち上がったのが、認定特定非営利活動法人カタリバ。全国の小中高校がほぼ一斉に臨時休校となった3月初旬から、オンライン環境がない家庭の子どもたちのために学習支援を始めます。6月中旬には、支援内容を拡充した「あの子にまなびをつなぐプロジェクト」をスタート。そのオンライン記者会見のサポートをひとしずくにご依頼くださいました。カタリバ代表の今村さんに、プロジェクトに込めた想いやひとしずくと協働したことで変化した広報活動の意識を伺いました。

初めてのオンライン記者会見を実施、新たな関係性も構築する

認定特定非営利活動法人カタリバ 代表理事 今村久美さん

ひとしずく担当 こくぼ ひろし(以下、こくぼ):
今回、弊社は、カタリバさんの新事業である「あの子にまなびをつなぐプロジェクト」を発表したオンライン記者会見のサポートをさせていただきました。まず、このプロジェクトを開始した経緯と概要について、改めて教えていただけますか?

認定特定非営利活動法人カタリバ 代表理事 今村久美さん(以下、今村さん):
新型コロナウイルス感染拡大により、総務省の「労働力調査(基本集計)2020 年(令和2年)4月分」によると、営業自粛の影響などによる休業者は 597万人、パートやアルバイトなどの非正規労働者が97万人減り、うち28万人は35~44歳の母親世代の女性というデータが出ました。

実は、日本の子どもは、7人に1人が「相対的貧困(その国や地域の水準の中で比較して、大多数よりも貧しい状態)」とされています。厚生労働省の「生活保護世帯出身の大学生等の生活実態の調査・研究」によると、生活保護世帯の子どものうち高校卒業後に大学・短大に通うのは、わずか19%。貧困家庭で育った子どもたちは、学習へのつまづきや自己肯定感の低下を抱えながら、中卒・高卒で低賃金労働に就くことが多い傾向にあります。

教育NPOとして活動してきた我々には、コロナ禍によって、もともと生活に苦労していた家庭の子どもたちがさらに困窮してしまう様子が予測できたんです。そこで、3月初旬の全国一斉臨時休校措置がとられて以降、オンラインでの無料の居場所「カタリバオンライン」や、困窮世帯へのパソコンやWi-Fi の無償貸し出し、学習支援、お弁当配布などを行ってきました。

「あの子にまなびをつなぐプロジェクト」は、その支援内容を拡充し、(1)オンラインを活用して子どもと保護者に顔の見えるつながりを届ける取り組み、(2)ひとりひとりに合わせた学習支援と新しいキッカケを届ける取り組み、(3)オンライン環境のない子どもへのパソコンやWi-Fi の貸与、(4)研究者とともに本プロジェクトの評価研究を行います。

こくぼ:
オンライン記者会見のサポートを弊社にお声がけ頂いた経緯は、どのようなものだったのでしょうか?

今村さん:
日々、コロナの感染者数や社会情勢が変わるなか、スピード感と感染対策を考慮した結果、オンライン記者会見の開催を決めました。でも、実は、記者会見をすること自体、初めての取り組みだったんです。

そこで、「あの子にまなびをつなぐプロジェクト」の設立発起人のおひとりでもあり、長年の友人でもある、株式会社マザーハウスの代表取締役副社長である山崎大祐さんに、「記者会見をするためにはどうすればいいのか?」とご相談しました。すると、山崎さんから、ひとしずくさんをご紹介いただき、すぐにこくぼさんにご連絡した次第です。

タイトなスケジュールのなか、お打ち合わせや広報事務局の設置、メディアへの案内、記者会見当日の進行などを臨機応変にサポートいただき、本当に感謝しています。

こくぼ:
こちらこそ、有意義なプロジェクトの後方支援をさせていただき、ありがとうございました。弊社のサポートによって効果を感じられた点があれば、教えていただけますか?

今村さん:
これまでのメディアとの関わり方は、先方からの取材依頼に応じて、その都度取材をお受けしていた程度でした。メディアとの関係性の築き方をわかっていなかったんです。今回初めて、こちらからメディアにはたらきかけて記者会見を開きましたが、ひとしずくさんの伴走があったことで、安心してメディアリレーションができましたね。

団体としてのあり方やつくりたい未来像を発信する必要性を感じ、広報部の新設へ

オンライン記者会見では、プロジェクトに参画する、慶應義塾⼤学総合 政策学部教授・教育経済学者の中室牧⼦先生、株式会社COMPASS ファウンダーの神野元基さん、⼥優の有森也実さん、⼀般財団法⼈村上財団 代表理事の村上 絢さんにご登壇いただいた

こくぼ:
ありがとうございます。オンライン記者会見では、クラウドファンディングによる支援募集も告知されました。資金を集めるファンドレイジングには、助成金を活用したり、企業にスポンサーになってもらったり、さまざまな手法がありますが、なぜ、クラウドファンディングを選ばれたのでしょうか?

今村さん:
3月初旬から子どもたちが学校に行けない日々が始まり、我々は「日本中が被災地になってしまった」という危機感を覚えました。そこで、子どもたちのために何ができるのか議論を重ね、パソコンやWi-Fi の無償貸し出しなど、オンラインを活用した支援をすぐに始めたんです。

当時、世間では、経済力がある家庭を前提とした「学習の遅れをどうするべきか?」という話題ばかりが取り沙汰されていました。

しかし、「学習が遅れてしまう」以前に、「学習をする環境がない」という困窮世帯の子どもたちもいるんです。そのような子どもたちに目が向けられないことに、私は絶望感を味わいました。先進国とされる日本では、子どもたちの貧困問題は見えづらい背景もありますが、コロナという非常事態のもとで、世の中の人々の無関心、余裕のなさに拍車がかかり、ふたつの層の分断が浮き彫りになったのではないでしょうか。

この社会課題を世の中に発信することもカタリバのひとつの役割だと考え、さまざまな人々にプロジェクト支援をしていただけるクラウドファンディングを選びました。

こくぼ:
オープンな手法で支援ができるクラウドファンディングの利点を活かされたのですね。

今村さん:
また、一般財団法人の村上財団さんにご賛同いただけた側面も大きいですね。1,500万円を目標にクラウドファンディングを呼びかけ、全寄附額合計 500 万円までは、クラウドファンディングでご寄付いただいた金額と同額を村上財団さんからもご寄付いただけるという、マッチング寄附にトライすることができました。村上財団さんのご厚意によって寄付額が増えることは、より多くの子どもたちに還元できるメリットがあります。

こくぼ:
村上財団さんを始め、発起人やサポーターの皆さんには、とても心強いご支援をいただけましたね。記者会見を終えて、団体の活動にもたらされた変化はありましたか?

今村さん:今年、カタリバは、設立から20周年を迎え、現在、140名のスタッフが、子どもたちのために一生懸命仕事をしています。

これまで事業を続けてきたなかで、教育活動を支援する団体として認知いただけるようになったこともあり、これからは、団体としてのあり方やつくりたい未来像を積極的に発信していく必要があると感じるようになりました。そこで、広報部を新設することにしたんです。

こくぼ:
それは素晴らしいですね! ただ、カタリバさんは既に広報活動が充実している印象がありました。今後、広報活動をどのように強化していくのでしょうか?

今村さん:
ありがとうございます。SNSなどを通じて日々の活動報告はしていますが、もう少し踏み込んで、丁寧に行いたいと思います。たとえば、虐待事件など、子どもに関わる社会的な問題が起きたとき、団体としてどのように考えるかを発信しつつ、そのひとつの解決策としてカタリバの活動を提案していきたいですね。

こくぼ:
「カタリバはこう考えます」という文脈に沿ったコミュニケーションをとることで、団体の理念や事業がこれまで以上に伝わるといいですね。

子どもたちの未来のために、同じ志をもつ仲間を増やすネクストステージに進む

「あの子にまなびをつなぐ」プロジェクトは、2020年8月31日までクラウドファンディングで支援募集中
https://readyfor.jp/projects/manatsuna?media

こくぼ:
広報活動以外に、今村さんが描く今後のカタリバの方向性について教えていただけますか?

今村さん:
まず、子どもの教育支援を社会的に充実させるために、その担い手を育成する必要があると考えています。

私はこれまで20年間カタリバの活動に従事してきましたが、残念ながら、日本の子どもたちにとって、親や先生以外の「ナナメの関係」である存在は増えていないように感じます。どんな家庭や地域に生まれ育っても、安心できる「ナナメの関係」の存在がいることが当たり前の世の中であってほしいし、子どもたちの支援者が増えないと、さらに格差と分断が進んでしまう。

だからこそ、教育活動に関わりたいと思える人材を増やす仕組みをつくりたいんです。これからは、子どもたちの未来のために、我々と同じ志をもつ仲間を増やすステージに進みたいと思います。

こくぼ:
現状を世の中に伝え、支援者を増やすことで、子どもたちの未来をよくしていきたいですね。

今村さん:
はい。また、「子どもたちの教育環境には、大人のサポートが必要」というメッセージを、エビデンスにもとづいて発信していく予定です。

日本の教育は、コロナを機に、ますますオンライン化、遠隔化が進むと思います。でも、子どもたちがパソコンやインターネットを安全に活用するためには、やはりサポートする大人が必要です

そこで、「あの子にまなびをつなぐプロジェクト」では、慶應義塾大学 総合政策学部の中室牧子教授の研究室と共同研究に取り組みます。パソコンやWi-Fiの貸与者を対象に、子どもや保護者にとって有効なオンライン学習のあり方を半年かけて検証していく予定です。その結果から見出した教育課題を政策提言にも活用できればと考えています。

こくぼ:
これからのカタリバさんの新たなチャレンジを応援しています。今後ともよろしくお願いいたします。

 
写真提供:認定特定非営利活動法人カタリバ

RECENT WORKS

社名ひとしずく株式会社
所在地本社:〒231-0003 横浜市中区北仲通3-33
大磯オフィス:神奈川県中郡大磯町大磯636-1
電話045 900 8611
FAX045 330 6853
メールinfo@hitoshizuku.co.jp
代表こくぼひろし
設立2016年3月
資本金3,000,000円
事業内容広報及びパブリックリレーションズ代理業
ソーシャルグッドプロジェクトの企画・制作・運営
顧問弁護士丁絢奈(よこはま第一法律事務所)
税務顧問元小出 悟(会計事務所ユニークス)
顧問社労士社会保険労務士法人ワーク・イノベーション