CASE 19

一般財団法人 児童健全育成推進財団

(2019年4月~2020年現在)

全国の児童館を支える「児童健全育成推進財団」サイトリニューアルを実施。
志をともに児童館の存在意義を広く伝える支援に取り組む

全国に約4,500カ所ある児童館を支援する組織、「児童健全育成推進財団」(以下、育成財団)。2018年からひとしずくが後方支援させていただいていることから、育成財団の役割や児童館の活動について紹介するウェブサイトやパンフレットのリニューアル制作をご依頼いただきました。育成財団が抱える潜在的な課題に耳を傾け、制作のプロセスを丁寧に行い、関わった全員が共通の認識をもって取り組み、リブランディングを行った過程を振り返りました。

共通認識をもつために、児童館の志を言語化するクレドの制作を提案

一般財団法人 児童健全育成推進財団 屶網 良さん

ひとしずく かねこまみ(以下、かねこ):
今回、児童健全育成推進財団(以下、育成財団)のウェブサイトと児童館・児童クラブの情報を紹介する「コドモネクスト」のウェブサイト、育成財団や児童館を紹介するパンフレットなどのリニューアル制作を後方支援させていただきました。

弊社にご依頼いただいた時点の課題意識について、改めて教えていただけますか?

一般財団法人 児童健全育成推進財団 屶網 良さん(以下、屶網さん):
まず、ウェブサイトのリニューアルをお願いした理由については、以前のサイトは制作当初から10年以上経過していたこともあり、デザインが古い印象になっていました。サイトの構造についても、情報更新のたびに追加していたため、深い階層になって使いづらくなっていた状況でした。「育成財団の事業について知りたいが、ウェブサイトのどこを見ればよいのか?」「そもそも児童館という施設自体がわからない」といったお問い合わせも増えてきていたんですね。そのため、もっと分かりやすく伝えるウェブサイトにしたいと考えていたところでした。

また、その際、パンフレットのリニューアルも併せてお願いしたのは、事業が多岐にわたっているため、全体のイメージを統一するブランディングの必要性を感じていたからです。そんな背景から、もともと育成財団の支援をしていただいていたひとしずくさんに、制作をお願いすることにしました。

かねこ:
我々は各ツールのリニューアルというお話をいただき、まず始めに「児童館とはこういう場所である」ということを伝えるクレド(信条)の制定をご提案することに。そこで、コピーライターの武田道生さんに制作チームに入っていただきました。クレドについて、育成財団や児童館職員の方々から何か反響はありましたか?

屶網さん:
クレドを制作する前に、武田さんが児童館への理解を深めるため、職員の仕事をボランティアで体験してくださいましたよね。そこで感じた想いを反映して、児童館の本質を捉えたクレドを生み出してくださったと思います。クレド配布から時間が経った今も館内に貼っている児童館が多いようです。

かねこ:
それはとてもありがたいですね。武田さんご自身も児童館利用者だったことから、児童館について自分ごととしても捉えてくださったようでした。

屶網さん:
児童館のクレド以外には、育成財団のパンフレット内のキャッチコピーも急きょ制作いただきましたが、キャッチコピーについては、これまで団体内でも考えたことがありませんでした。制作を依頼する前に職員で考えてみたのですが、良いキーワードがなかなか出てこなかったんです。そんな中、ひとしずくさんの提案により、育成財団の職員を集めて、制作チームを交えたワークショップを実施してくださいましたね。そこで引き出した言葉や想いを反映させてクレドを制作してくださったので、とてもありがたかったです。

我々の仕事は、ひと言では説明しづらいのですが、児童館を広めるためにも、児童館を支援する育成財団について表現するのは大事なこと。だからこそ、育成財団を象徴するキャッチコピーという強いツールを授けていただいたと感じています。個人的には、「子どもたちに、遊びの時間と、いつもの居場所」のキャッチコピーが特に気に入っていますね。

かねこ:
今回、コピーライターの武田さん以外にも、キートン株式会社ウェブディレクターの桑山洋達さんやデザイナーの原みずほさんとも一緒に児童館に伺い、その空気感をサイトデザインに反映させて制作を進めました。制作チームにとって、児童館の重要性や児童館職員さんの子どもたちへの想いを知る貴重な機会になったと思っています。

屶網さん:
制作チームの方々にも児童館の想いを知っていただき、とてもうれしいです。

制作チームで児童館を訪れ、現場で感じた想いや空気感をクリエイティブに生かした

外部の視点からふたつのウェブサイトの複雑な情報を整理して、満足のいくリニューアルを実現してもらえた

ワークショップを実施して、課題を言語化、ふたつのウェブサイトの役割を明確化した

かねこ:
児童館を理解するプロセスについてふり返っていただきましたが、実際にウェブサイトのリニューアルを進める中で、大変だと感じていたことはありますか?

屶網さん:
いちばん苦労した点は、育成財団とコドモネクストという、ふたつのウェブサイトの棲み分けですね。育成財団のサイトは、財団関係者や行政、企業向けに、コドモネクストのサイトは、保護者や児童館職員、その他一般の方という読み手を想定してコンテンツを整理していただきました。どの情報をどちらのサイトに入れるか悩みましたが、ひとしずくさんのディレクションのもと、制作チームにうまく解決していただいたと思います。

かねこ:
ありがとうございます。実は、ふたつのサイトの複雑な情報整理については、我々も迷いが生じる部分でした。

屶網さん:
我々內部の人間でも迷うのに、ひとしずくさんにはサイトの構造をよく理解してご提案していただいたと思います。外部としての視点がぶれないからこそ、冷静に、そして大胆に判断していただけたのではないでしょうか。反省点としては、児童館の子どもたちの遊びをランキングで紹介していた「遊び王」のページのしくみが複雑で、今回の予算内では新しいウェブサイトへ移行できなかったことですね。

かねこ:
そうですね、「遊び王」はまた別のタイミングで改善していけたらと思っています。育成財団や児童館のパンフレットについては、いかがですか?

屶網さん:
児童館にとって、地域へのPRはとても重要だと考えています。児童館を利用する、利用しない、ということとは別に、児童館が自分の住んでいる地域にあることを住民の方々に知っていただきたいので、街の広報紙などと一緒に配布できるツールの必要性を感じていたんです。「じどうかんBOOK」は、乳児健診や地域のお祭りで配布するなど、自治体には積極的に活用してほしいと思っています。

かねこ:
「じどうかんBOOK」やリニューアルした育成財団のパンフレットは、育成財団ウェブサイトの「資料ダウンロード」箇所にアップしています。実物が手に入らない方にもぜひご覧いただきたいですね。

屶網さん:
ずっと「児童館って何?」と言う人をなくしたかったんです。「児童クラブと何が違うんですか?」「子どもがただ遊ぶところ?」という声を聞くことが多かったので。「児童館とは0~18歳未満の子どもたちが自由に利用することができ、専門知識と技術をもった職員がいる、子どもたちの遊びを通じた健全育成を支援する児童福祉施設である」ということをウェブサイトでしっかり伝えたいという想いがありました。リニューアル後は、当初の目的を達成でき、満足のいくウェブサイトやパンフレットになったと思っています。

かねこ:
そのようにおっしゃっていただき、光栄です。

児童館に関わることで、その魅力に惹き込まれる人が増えていく

「児童館という存在を知り、その魅力を伝えるこの仕事にのめり込んだ」と語る屶網さん

かねこ:
ところで、育成財団さんの後方支援を始めさせていただいた1年半前と現在とで、弊社に対する印象は変わりましたか?

屶網さん:
育成財団内で意思疎通しやすいPR会社を探していたときに、日本NPOセンターの方から「非営利団体のPRが得意な会社がある」とご紹介いただいたのが、ひとしずくさんと我々の最初の出会いと聞いています。

私が実際にひとしずく代表のこくぼさん、かねこさんとお会いしたときは、品のいい物静かな方々だなという第一印象を受けました。ただ、お話してみると、おふたりとも心にパッションを秘めていて、すぐに我々のスタンスも理解してくださいました。かねこさんには児童館のセミナーに出席いただくなど、現場からの評判もいいですね。

また、私は児童館にとって広報スキルの向上が必要と考えているため、中堅職員向けの広報講座を開催して、こくぼさんに講師として登壇していただいたこともありました。私自身、育成財団でのキャリアのスタートは、当時あった広報部だったんです。そのときの経験から、「広報」と「広告」の違いについて考えたこともありました。だから、ひとしずくさんとご一緒することになったときに、広報のプロとして、どのような仕事の仕方をされるのか、個人的にも興味があったんです。

かねこ:
広報部があったのですね。屶網さんは育成財団には新卒として入られたのですか?

屶網さん:
はい、今年で20年目になります。大学では教育学科だったのですが、教員の道には進まず、何かしら子どもと接点があるような仕事に就きたいと思っていました。就職氷河期に就職活動をして苦戦していたころ、ゼミの先生からこの仕事について教えてもらったんです。

ただ、もともと児童館利用者や児童館職員だったわけではないので、「育成財団で働く意義とは何か?」という問いにすぐに答えることができず、当初は葛藤したこともありましたね。

かねこ:
そうだったんですね。その後、児童館について知る中で、どのように感じられましたか?

屶網さん:
私たちで主催する児童館職員対象の研修でたくさんの人々に出会ったり、広報部の取材でさまざまな現場を見せてもらったりするうちに、児童館の魅力を伝えるこの仕事にのめり込んでいきました。と同時に、自分も子どものころに児童館という存在を知っていたら、また違った子ども時代だったのかなと感じていますね。

かねこ:
私自身も子どものころに児童館で遊ぶ機会がありませんでした。ただ、大人になった今、社会的に意義のある児童館の後方支援をさせていただくことができて、とてもやりがいを感じます。

屶網さん:
ありがとうございます。ひとしずくさんにとっても、支援をする団体への思い入れは大事な要因なんでしょうね。

かねこ:
はい。児童館職員の方々と接する中で、おひとりおひとりが楽しんで仕事をしていらっしゃる様子にも共感しました。

屶網さん:
それは私自身も強く感じますね。子どものころに児童館で遊んで育ち、もともと志を抱いていた者もいれば、私のようにあまり分からないまま飛び込んで、児童館の世界観に惹き込まれたという者もいると思います。この仕事を続けるうちに、みんなが児童館に対して熱い想いをもつようになっていったのではないでしょうか。

かねこ:
それは素晴らしいですね。最後に、今後の展望を教えていただけますか?

屶網さん:
やはり、世間の方々に児童館の役割や存在意義を知っていただきたいですね。そのために、ひとしずくさんを始め、いろいろな企業の力をお借りしながら、「児童館」という名称を目にしてもらう機会を増やしていきたいと思っています。

児童館は、児童館がない地域の方は存在自体知らない方も多いですし、児童館がある地域でも「児童センター」や「児童会館」など各施設によって名称が異なるために、児童館という印象が統一しにくい課題もあります。

ただ、ひとしずくさんに支援をお願いするようになってから、定期的にプレスリリースを発信してくださるおかげで、メディアに児童館を紹介してもらえる頻度が確実に増え、徐々に児童館に対する認知度が高まっているように感じますね。

かねこ:
PRの効果を感じていただけてよかったです。我々も、「児童館とはどんな場所?」「児童館ではどういう人が働いているの?」という問いに向き合って、今後も発信を続けていきたいと思います。

屶網さん:
そうですね。日本全国の児童館の魅力や先進的な取り組みを定期的に発信するために、全国の活動をできるだけキャッチしていきたいと思います。

また、児童福祉施設である児童館は、虐待など子どもにまつわる痛ましい問題の発生を予防する機能もあります。児童館の存在を社会全体に伝えることは、そういった子どもたちの深刻な問題を減らしていくことにもつながると信じています。

そのために今後もひとしずくさんと一緒に、さまざまな手法で児童館について伝えていきたいですね。

かねこ:
ありがとうございます。こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします。

 
一部写真提供:一般財団法人 児童健全育成推進財団

RECENT WORKS

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代表こくぼひろし
設立2016年3月
資本金3,000,000円
事業内容広報及びパブリックリレーションズ代理業
ソーシャルグッドプロジェクトの企画・制作・運営
顧問弁護士丁絢奈(よこはま第一法律事務所)
税務顧問元小出 悟(会計事務所ユニークス)
顧問社労士社会保険労務士法人ワーク・イノベーション