CASE 18

二宮町役場 政策総務部 地域政策課 広報統計班

(2018年11月〜2019年3月)

二宮町役場全体の情報発信力を強化するために、広報研修を実施。
組織を横断したコミュニケーションの向上をサポート

神奈川県南西部の海沿いに位置し、約3km四方の小さな町である二宮町。人口が平成11年をピークに減少傾向となったものの、近年、二宮町に惹かれて新たに越してくる移住者も多く、人口減少のカーブは緩やかになってきているとのこと。「海や山に囲まれ、心穏やかに暮らせるこの町が大好き」と語る、二宮町の広報業務を担当する山下さんが、町役場全体の情報発信力を強化するため、ひとしずくに広報研修を依頼してくださいました。「広報とは関係構築を目指すプロセス」ということを念頭にお伝えしながら、時代に合わせた手法についても盛り込んだ研修を振り返り、その後の職員の意識や二宮町の変化について伺いました。

衝撃的だったひとしずくとの名刺交換。協働の想いをずっと温めていた

二宮町役場 政策総務部 地域政策課 広報統計班 山下昌志さん

ひとしずく担当 たかはしあすか(以下、たかはし):
山下さんに初めてお会いしたのは、今回の「情報発信力強化研修」のご依頼を受け、お打ち合わせをさせていただいた2018年6月でしたね。その後、現況調査として二宮町役場の職員の方々にアンケートをとり、それをもとに対面でのヒヤリングを行なった結果を踏まえて、2019年1月に研修を実施しました。まずは、ひとしずくにご依頼いただいた経緯を教えていただけますか?

二宮町役場 政策総務部 地域政策課 広報統計班 山下昌志さん(以下、山下さん):
二宮町のシティプロモーションにご協力いただいている町民の方から、「面白い人がいるから話を聞いてみない? きっと良い話を聞けると思うから」というお誘いを受け、ひとしずく代表のこくぼさんをご紹介いただいたのがそもそもの始まりですね。約2年前、私が広報統計班に異動してきたばかりで、広報やシティプロモーションについて、右も左もわからなかった時期のことです。何かヒントを得られればと、こくぼさんと初めてお会いしましたが、そのたたずまいに、いわゆるPR会社のビジネスマンという固定概念が覆されました。

中でも強く印象に残っているのが、名刺交換です。社名もお名前も全部平仮名で。これまで見たことがない名刺に衝撃を受け、お話を伺う前から「この人、この会社は、絶対に面白いはず!」と直感的に思いました。ひとしずくさんの名刺は、とても奥深くて、いろいろな想いが詰まっているのではないでしょうか。シンプルなのに強烈なインパクトを与え、名刺からも会社を表現する戦略なのかな?と、新鮮に感じました。それに平仮名は、子どもでも読めるし、柔らかい印象を受けますよね。ひとしずくという会社の柔軟さがひと目で伝わると思います。

たかはし:
ありがとうございます。名刺交換のときに、社名や氏名が平仮名の記載であることについてコメントをいただくことが多く、その由来や込めた想いをお話させていただくきっかけになっていますね。

山下さん:
その後、こくぼさんのお話を伺ったところ、考え方やこれまでやってきたこと、これからやっていきたいことについて、とても共感したんです。「いつかご指導いただけたらいいな」という想いをずっと温めていて、ようやく今回の研修をお願いすることができました。

時代に合わせて変わっていくために、情報発信力を強化する広報研修を実施

二宮町の広報活動を支えてきた広報紙「広報にのみや」。「情報発信力強化研修」を終えて、さらに進化を遂げている

たかはし:
ずっとひとしずくの存在を気に留めてくださっていたのですね。それでは、二宮町役場で「情報発信力強化研修」を行う必要性を感じた理由を改めて教えていただけますか?

山下さん:
ひとしずくさんは、他の地方自治体のPRも手がけていらっしゃるのでご存知かと思いますが、町役場は区役所や市役所のように大規模ではないので、必然的に職員一人ひとりが抱える業務範囲が広くなってしまいます。例えば、私の場合、広報紙の編集・発行やホームページの更新を始め、シティプロモーションや統計業務など、多岐にわたる業務を担当しなければなりません。社会情勢が目まぐるしく変わる中、町民の皆さんのニーズも増え、それに伴ない町役場の業務も多種多様にわたっています。

これまでの広報業務は毎月発行している広報紙を軸としてきましたが、町民の方からは「見ていない」「知らない」「興味がわかない」というお言葉をいただくこともありました。これだけインターネット環境が整備され、SNSも普及している中で、「この町の広報も時代に合わせて手段を選びながら変わっていかなければいけない」と思いながらも、日々の業務に追われてどうすべきか悩んでいたんです。

たかはし:
そこで、二宮町役場全体の情報発信力を底上げするために、研修を行う運びになったのですね。20ある各課に、それぞれ広報リーダーを新たにたてるという試みが素晴らしいなと思いました。

山下さん:
町役場の発する情報は大小さまざまで、その情報のターゲットとなる方もさまざまです。各課が、少人数の中、それぞれ業務を頑張り、せっかく事業を積み重ねてきても、最終的に広報がうまくいかないと意味がなく、住民サービスにもつながりません。また、町役場の情報すべてを広報担当だけで扱うことに限界も感じていて、その解決の糸口として、専門的な業務を行う各課で広報に長けた人材を育て、効率的・効果的な情報発信をしていきたいという狙いがありました。

そこで、二宮町役場独自で講師をお招きして、職員の誰もが参加しやすい研修を実施する運びになったのですが、漠然と「何か面白いことをしたい」と考えたとき、こくぼさんの顔が思い浮かんだんです。こくぼさんは相談しやすい雰囲気をおもちですよね。

たかはし:
最初にご相談いただいてから、こくぼと「山下さんの想いを推進できるような研修にしよう」と話し、準備を進めていました。研修を終えて、感じられたことを教えていただけますか?

若手職員を中心に、約40名の職員が自主的に出席した「情報発信力強化研修」。「広報は関係構築を目指すプロセス。二宮町にとっての広報とは、町民と長期的な信頼関係を築き、維持すること」と伝えた

山下さん:
広報リーダーたちの意識の変化に手応えを感じていますね。例えば、研修前までは、広報紙に掲載するために各課が提出する原稿は、広報担当が書き直すこともありましたが、研修後は、各課内で広報リーダーと相談してから原稿を仕上げてくるようになりました。ホームページでの情報発信についても、ページの作り方や表現の仕方などに変化が見られます。研修の成果が徐々に浸透してきたと感じて、これからが楽しみですね。

今は毎月1回、広報リーダーたちと、ホームページの情報についてわかりやすくするためにはどうしたらいいか検討する会議をしています。回を重ねるごとに、それぞれがたくさん意見を出し合えるようになってきました。会議を始める前には、研修で実施した「伝えるクイズ」を行って、緊張の糸を解きほぐしてから始めているんですよ。

たかはし:
広報リーダーの方々の意識が変わり、徐々に周りの方にも伝わるといいですね。20課あるとはいえ、どの課も二宮町のためという目的は共通していますし、組織の中を横断したコミュニケーションを図れるのではないでしょうか。

山下さん:
そうですね。これからの行政はいわゆる“お役所仕事”ではだめ。町役場が町民の皆さんにはたらきかけるため、職員それぞれが担当している業務に面白みを見出す視点も大事です。そのためには、組織改革というより意識改革の必要があると思います。研修の最後に、参加した職員たちがこれからの意気込みを語ってくれて、「普段は表に出さないけれど、熱い想いをもっているのだな」と感じ、とてもうれしかったんですよね。特に若手職員の意見はどんどん引き出していきたいと考えています。

たかはし:
研修について、「もっとこうしてほしかった」という改善点があれば教えていただけますか?

山下さん:
当初は、私自身を含め、各課の職員たちが作成している制作物について、プロの視点から厳しく評価してもらうことも考えていたのですが、まだ業務に不慣れな若手職員にも配慮して、広報の基礎を教えていただく構成でお願いしました。基本的には理想どおりの内容で、今回の出席者だけではなく、職員全員に参加してもらいたいくらいでしたね。

たかはし:
我々としても、事前に問題点についてアンケートやヒヤリングをさせていただいた後、研修の構成をご相談して実施までスムーズに進められたので、準備期間をしっかりいただけたのはありがたいことでした。

山下さん:
予算も限られている中、何度も足を運んでいただき、申し訳ないくらいでした。ただ、そのおかげで、研修当日に参加者の意識も高まっていたと思うんですよね。

たかはし:
そうですね。事前にお会いできたことは、お互いにとって良かったと思います。

発展し続ける二宮町。町役場と町民との新たな取り組みを増やしたい

二宮町のキャッチコピー「きみのふるさとになりたい」は、町民の方の発案。「町民の皆さんの関心を高めることが、まちづくりの第一歩だと思います」と語る山下さん

山下さん:
ここのところ、二宮町に可能性を感じて移住しこられた方々が、町内のあちらこちらで新たな取り組みを始められているんです。小さな町だけれど、その分、行政と住民の距離が近いので、町民の方々が何かをやりたいと思ったときに、町役場の職員として少しでもサポートできる存在でありたいと願っています。

たかはし:
各課の広報リーダーを始め、職員の皆さんが町民の方々とコミュニケーションをとり、面白い取り組みをしているという情報を町外に発信することで、二宮町にもっと人が集まってくるようになったらいいですよね。個人的な質問になりますが、山下さんは二宮町育ちなのですか?

山下さん:
2歳のときに横浜から引っ越してきたので、私も移住者ですね。それ以来、二宮町で育ち、この町が大好きだったので、何かしら関わることができたらと思っていたところ、町役場職員の募集を知り、運良く入庁できました。これまで、経済・観光、ごみ、子育て支援、社会福祉、都市計画など、さまざまな部署を経験しましたが、どの部署でもたくさんのことを勉強させていただき、ますますこの町の魅力にはまっています。

二宮町は海も山もあり、豊かな自然に囲まれながら心穏やかに生活できるのが魅力ですね。
それに加えて、都心へのアクセスも良好で、朝の電車はほとんど座れるので、「通勤」と「自然環境」、どちらも両立できる移住が可能です。

たかはし:
私も訪れるたびにホッとした気持ちになります。「働き方改革」が推し進められている現在、都心で働いていても早く帰宅できるようになり、通勤時間が少し延びてもいいかなと思う人もいるかもしれませんね。移住促進については、どのような取り組みをされているのですか?

山下さん:
約3年前から、二宮町のシティプロモーションを始め、町民主導による情報発信を主に取り組みを続けています。なぜなら、移住を希望される方の中には、行政情報はもとより、「住民の生の声を聞きたい」という方が多いからです。心温かく、この町が大好きな町民の方々にご協力いただいています。「きみのふるさとになりたい」というキャッチコピーも、町民団体「にのみやLOVERS~まちの魅力伝え隊~」が作ってくださったんですよ。

ただし、町民の方々にすべておまかせというわけではありません。町民にできること、行政や職員にできること、お互いが連携してできることを、整理しながら進めています。
人口減少を課題に抱える二宮町ですが、町だけが移住促進をしても仕方がなく、町民一人ひとりがこの町の課題である人口減少を認知し、それぞれ生の声を発信していただくことで、効率的で効果的なプロモーションにつながると考えています。

2年前の夏からは、より広く周知するため、普段から町民の皆さんと接する職員自身が広告塔となり、クールビズ期間中は移住促進のキャッチコピーをプリントしたポロシャツを着てアピールすることにしました。ポロシャツの着用は希望制かつ自腹での購入だったので、「職員は約160人だから、発注は50着くらいかな」と予想していたのですが、ふたを開けてみたら、なんと490着の購入希望があったんです!ポロシャツへのプリントは、障がい者福祉施設にお願いしていたんですが、予想を大幅に超えてしまったので、あわててプリントの手伝いに行きました(笑)。昨年も400枚、今年は300枚の購入希望があり、夏になると、ほとんどの職員が8色あるポロシャツをそれぞれ着ていて、町役場全体に華やかな雰囲気をもたらしています。

この一件で、二宮町役場の職員は、実は熱い人間が多いということがわかりましたね。自然豊かな二宮町ですが、いちばんの魅力は人なのかもしれません。町外の方や、移住されてきた方からも「町民が心温かい」とよく聞きます。そんな心温かい町民の皆さんが町役場の職員を育ててくださっている面もあるのでしょうね。

たかはし:
私も、職員の皆さんに何度かお会いして、秘めた熱さを感じました。小さな組織だからこそ、まとまって動きやすく、小さな町だからこそ、町役場の職員と町民の関係性も構築しやすいという良さがありますね。

山下さん:
ありがとうございます。ぜひ、二宮町の今後にご注目ください。

たかはし:
こちらこそ、ありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

左から、ひとしずくのたかはし、二宮町役場の山下さん

 
撮影:疋田千里 編集:よしだあきこ

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代表こくぼひろし
設立2016年3月
資本金3,000,000円
事業内容広報及びパブリックリレーションズ代理業
ソーシャルグッドプロジェクトの企画・制作・運営
顧問弁護士丁絢奈(よこはま第一法律事務所)
税務顧問元小出 悟(会計事務所ユニークス)
顧問社労士社会保険労務士法人ワーク・イノベーション