CASE 16
横浜市 経済局 市民経済労働部 商業振興課
(2018年10月〜2019年3月)
横浜市内にある7商店街の個性を引き出す。
複合的な調査をもとに商店街の未来をともに描く
横浜市中区に拠点を置くひとしずく。今回初めて横浜市からの依頼を受け、商店街の実地調査とコンサルティングを行う「横浜市商店街フィールドサーベイ事業」において、市内7商店街の調査・コンサルティングを実施することに。これまでひとしずくで後方支援を行った秋田県鹿角市、栃木県大田原市、神奈川県中郡二宮町といった、各地の自治体の実績を踏まえ、現場に寄り添いながら、商店街を運営する商店会や利用する住民の方々の声に耳を傾けました。7商店街の中から、戸塚宿ほのぼの商和会の副会長である森 祐美子さんにお話を伺いました。
商店会結成10年の転換期、商店街の実態に向き合うため横浜市商店街フィールドサーベイ事業に応募
ひとしずく担当 かねこまみ(以下、かねこ):
今回の横浜市商店街フィールドサーベイ事業開始時、7つの商店会ごとに、商店街の売り上げ低迷や会員の高齢化、それに伴う後継者不足など、現状の課題を教えていただきました。森さんが所属されている戸塚宿ほのぼの商和会の課題について、改めて教えていただけますか?
戸塚宿ほのぼの商和会 副会長 森さん(以下、森さん):
戸塚宿ほのぼの商和会は、もともと近くにあった区役所の駅前移転計画により、毎日3,000人あった人通りがなくなってしまうため、各商店が結束したというのが成り立ちです。結成後約10年経ち、新たな形を模索することが課題でしたね。
ちょうど3年前に、これまで戸塚宿ほのぼの商和会をリードしてこられた60〜80代のメンバーの皆さんが辞められて30〜50代に代替わりし、そのタイミングで私も副会長になりました。ありがたいことに、商店会の加盟店舗は増えています。
商店にとって毎月商店会費を払うことは、負担がかかりますし、会員になることが必ずしもすぐに集客に結びつくというわけではありません。でも、「こういう地域をつくっていきたい」という、戸塚宿ほのぼの商和会のビジョンを打ち出すことで、そのような想いや人とのネットワークを築くことに惹かれて加盟してくださった方もいるのかなと感じています。
かねこ:
戸塚宿ほのぼの商和会の皆さんのお人柄やこれまで積み重ねてきた活動の結果なのでしょうね。では、横浜市商店街フィールドサーベイ事業にお申し込みされたのは、商店会を中心に地域活性化へ向け、商店街でのヒアリングやアンケート調査が必要だと思われた、ということでしょうか。
森さん:
そうですね。そもそも商店街の実態を把握し、低迷する売り上げを回復したいという思いで会長が申し込んでくれました。ちょうど商店会で今後のビジョンを描くワークショップを開催したい!というタイミングでもあったので、外部からの視点やデータをいただくことで、商店会のメンバーが同じ方向を向いて動けるチャンスだとも思いました。
課題解決の方向性は決定づけない。自主的な議論を導くひとしずく流ワークショップ
かねこ:
その後、何度か足を運ばせていただき、通行量・街頭アンケート調査を経て、特色の異なる7つの商店街ごとにワークショップを開催するという、横浜市としても初めての取り組みにチャレンジしました。ご一緒した中で、良かった点、もう少しこうしてほしかったという点があれば教えていただけますか?
森さん:
良かった点は、商店街活性化のためのアイデア出しをするワークショップで、商店会のメンバーだけではなく、ひとしずくの皆さんに引っ張ってもらいながら、議論ができたこと。新体制になってから第三者がファシリテーターとして入った経験はなく、私たちにとっても大きな出来事でした。改善点は、議論を交わした後、ではどのように進んでいくのかという方向性を決定するところまで、もう少し実行に向けてのアドバイスをいただければ、さらにうれしかったなと個人的には思います。
かねこ:
実は事業がスタートする前に、横浜市のご担当者の方と「具体的なコンサルティングをどこまでするか?」という点について話し合いました。ひとしずくとしては、今回のような短期間の調査において、「現在の商店会の課題解決の方向性を決定づけてしまうのは、無責任なのではないか?」という結論になった経緯があったのです。実際、ある商店会のワークショップ後、「これからやるべきことの優先順位を決めてほしい」という発言もありました。
森さん:
そうなってしまうと責任転嫁がしやすくなる一面もありますよね。それは本来あるべき姿ではなく、商店会のメンバーで話し合って決めるのがベストだと思いますが、結論を求めてしまう気持ちも分かります。
かねこ:
最終的に、事業報告書には今後の方向性についてのご提案をまとめましたが、各商店会が「こう書いてあるからその通り試みた」とはならないように、皆さんが自主的に話し合っていただきたいですね。実はワークショップ当日も、参加した方々が“どのアイデアを選ぶのか=誰のアイデアを選ぶのか”にはならないように気を配っていました。
森さん:
そうだったのですね。実は後日、ワークショップで出たアイデアを踏まえて、戸塚宿ほのぼの商和会の総会に臨みました。そこでいくつか目標を定めることができ、まずは「戸塚宿ほのぼの商店街マップ」を作ることになりました。
かねこ:
それは良かったです! 他に変化はありましたか?
森さん:
バリアフリー化のため「店舗にスロープを設ける」という意見が出て、実際にスロープをすぐに設けてくださった店舗もあり、横浜移動サービス協議会の方のご協力によってボランティア研修も始まっています。先日は、車椅子をレンタルして実際に参加者が乗り、道路から各店舗までの導線を確認しました。私たち自身も知らなかったのですが可動式の手づくりのスロープを用意している店舗もあって、ちょっとした配慮で障がいの有り無しに関わらず、選択肢を増やせるということも認識できました。
かねこ:
実際に体験するということは、大きな財産ですよね。
森さん:
“気づき”の場をつくることは、とても大切だと思います。今は関心のある方しか集まっていないので、今後は関心のない方にも参加してもらうためにどうするかが課題ですね。
今年の秋には、戸塚宿ほのぼの商和会で「スリッパ卓球」を開催しようという話もアイディアあふれる会長の提案により出ています。上手い、下手の基準がない「ゆるスポーツ」なので、皆さんで楽しめるかなと。バリアフリー体験なども組み合わせて、関心のない方にも知ってもらいやすくなるのではと期待しています。今の世の中、“強い、速い、効率的”という視点で評価されがちですが、それだけにとらわれず、笑ったり楽しんだりできる場をつくりたいですね。
第一印象は、「ひとしずくと一緒に街づくりを考えていけるのは面白そう」
かねこ:
戸塚宿ほのぼの商和会の皆さんは、今回のワークショップでも積極的に携わってくださいましたね。
森さん:
これまでワークショップ自体は何度も開催していたので、発言しやすい場づくりを心がけることができたと思います。ただ、今回のワークショップでは、ひとしずくさんが議論をリードしてくださったので、参加者から想定外の意見が出てきて面白かったですね。
かねこ:
例えばどんなご意見ですか?
森さん:
盆踊りやスタンプラリーを開催したいというイベント性のあるものから、バリアフリー情報を組み込んだマップを作りたいという福祉的な視点があるものまで、幅広く意見をいただけたので良かったです。
かねこ:
ありがとうございます。最後に、本事業でご一緒する前後の、ひとしずくに対する印象を教えていただけますか? 最初のお打ち合わせ後、戸塚宿ほのぼの商和会のブログで会長さんが「ひとしずくというPR会社と打ち合わせをしました。この会社は当たりかも!」と書いてくださいましたよね。実は社内でシェアさせていただいたくらい、うれしいお言葉でした。
−以下、戸塚宿ほのぼの商和会ブログより抜粋−
ほのぼのを担当していただけるのが、ひとしずく株式会社様です。かわった社名ですが、『私たちが提案するのは「伝えない広報」です。』というお話を聴き、この会社、もしかしたら、「あたり!」と感じました。 「伝えない広報」とは、簡単に言うと派手な宣伝とか一時的な賑やかしではなく、商店街の個性を会員ひとりひとりが自覚して、それを日常的に体現することで、自然とお客様の口コミを生むというようなそよ風みたいな広報手段だととらえました。まさにほのぼのらしいではありませんか。
森さん:
そうだったのですね! 私の第一印象は、雑談の中で社会課題のグラフをアート作品に変える「CHART project®︎」について伺ったとき、とてもワクワクして。そのような事業も手がけていらっしゃる方々が、戸塚宿ほのぼの商和会に関わってくれることがうれしかったのを覚えています。ひとしずくさんと一緒に街づくりを考えていけるのはとても面白そう、と感じました。
商店会という組織において新しい風を吹かせることは、例えばイベントの計画ひとつとっても、実は勇気が必要なことでもあります。ひとしずくさんは、街づくりによくある手法ではない、新たな視点での提案をされ、仲間として一緒に頑張ってくださったので、本当に感謝しています。
かねこ:
そのように言っていただけると、本当にうれしいです。
森さん:
新しいコンテンツを初めての方々と一緒に進めるということは、ある意味賭けでもあって。お会いする前は若干の緊張と心配もあったのですが、お会いした後は「これは絶対にいける、さらに良くなれる」と感じましたね。
事業を終えた後の印象も、最初とあまり変わってはいません。商店街について定量的な調査結果を分析するだけではなく、個別に周辺店舗や住民の方々に定性的な調査をしてフィードバックをいただいたことで、仕事を丁寧に進めてくださる会社だと感じました。個人的にも代表のこくぼさんとは共通の知人がいて親しみを感じているので、こくぼさんを始め、ひとしずくの皆さんとはもっとご一緒したかったなと思っています。
かねこ:
こちらこそ、また何かあればぜひ! ひとしずく一同、今後ともよろしくお願いいたします。
撮影:柳井隆宏 編集:よしだあきこ
RECENT WORKS
社名 | ひとしずく株式会社 |
所在地 | 本社:〒231-0003 横浜市中区北仲通3-33 大磯オフィス:神奈川県中郡大磯町大磯636-1 |
電話 | 045 900 8611 |
FAX | 045 330 6853 |
メール | info@hitoshizuku.co.jp |
代表 | こくぼひろし |
設立 | 2016年3月 |
資本金 | 3,000,000円 |
事業内容 | 広報及びパブリックリレーションズ代理業 ソーシャルグッドプロジェクトの企画・制作・運営 |
顧問弁護士 | 丁絢奈(よこはま第一法律事務所) |
税務顧問 | 元小出 悟(会計事務所ユニークス) |
顧問社労士 | 社会保険労務士法人ワーク・イノベーション |