CASE 12

鹿角市役所 政策企画課 鹿角ライフ促進班

(2017年6月〜2018年3月)

メディア露出に止まらない踏み込んだ提案。
住民を巻き込み、関係性をつくり続けた一年。

秋田県最北東部に位置し、北は青森県、東は岩手県に隣接する鹿角市。北東北三県のほぼ中央に位置することから、周辺地域の交流拠点として重要な役割を担ってきた街ですが、現在は他市町村と同じく、人口減少と高齢化という大きな課題に直面しています。解決策のひとつとして、市として力を入れてきたのが、2015年から本格的に取り組みだした移住定住促進です。鹿角市役所 政策企画課 鹿角ライフ促進班の阿部朗人さんを中心に、鹿角ライフ促進班のみなさんとひとしずくがともに行った2017年度の移住促進PRについて振り返りました。

メディア露出のその先に課題感を持っていた鹿角市に、ひとしずくの提案がマッチした

鹿角市役所 総務部 政策企画課 鹿角ライフ促進班 主事 阿部朗人さん

ひとしずく担当者 うしじまようこ(以下、うしじま):
今回、鹿角市役所さんとひとしずくは、移住定住促進のプロモーションを1年弱かけて行いました。ひとしずくが関わるよりも以前から、鹿角市では「移住定住促進」のために活発に活動を展開されていたと思うのですが、市としてどういった課題感を持ってどのような活動をされていたのか、まずはそこからお話いただけますか。

鹿角市役所 阿部朗人さん(以下、阿部さん):
鹿角市では、2015年から移住定住促進に本格的に力を入れてきました。背景には、どの地方でも抱えている課題ですが、人口減少と高齢化の問題があります。鹿角市が活力ある街であり続けるために、働く場所の確保や子育てしやすい環境を整えつつ、UIJターンの促進と交流人口を拡大していこうと活動しています。

具体的には、政策企画課のなかに移住定住促進を専門に担当する鹿角ライフ促進班を立ち上げ、地域おこし協力隊制度を活用した「移住コンシェルジュ」という役職を置きました。鹿角ライフ促進班では、市職員と首都圏から移住してきた地域おこし協力隊の4人(発足当時)が、移住者の目線で移住希望者のサポートを行い、鹿角市の魅力を市内外に発信する業務をしています。

うしじま:
移住コンシェルジュのみなさんは、とてもフレンドリーで、初めてお会いしてすぐに打ちとけたのを覚えています。すてきなメンバーが集まっていますよね。みなさんで活発に活動されてきたのではないかと思いますが、ひとしずくにお声がけいただいた時に悩んでいたことはどのようなことだったのでしょうか。

阿部さん:
移住コンシェルジュは受け入れをスムーズに進めていくための取り組みですが、その前段階にあるのが、移住希望者の方々を増やしていくためのアプローチです。2015年発足当時の担当者がもともと観光の部署にいたこともあり、首都圏への情報発信の重要性を理解していました。メディアへのアプローチにも力を入れようということで、発足1年目からメディアへのPRを行い、当時の協力会社さんの尽力もあり、最初の2年でたくさんのメディアとのつながりがある程度できていたと思います。ただ、中にはこれは果たしてどれだけの効果があるのだろうか?というものもありました。

私が担当することになったのは3年目の年。メディアへのPRをその先にある実際の移住定住につなげられるかどうか、成果を求められる段階にありましたので、よりステップアップした、新しい移住定住促進PRをしていかなければいけないと思っていました。2017年度はプロポーザル入札形式で、複数の会社から提案を募集するとなったときに、よい企画を提案してくださいそうな方々にお知らせをしていこうとみんなで話していて、移住コンシェルジュのひとりから名前が挙がったのがひとしずくさんだったんです。

うしじま:
候補の一つにひとしずくを挙げていただけたことでご縁が生まれ、とても嬉しいです。2年間のベースづくりを終えて、次にどうするかという課題があったのですね。

阿部さん:
そうですね、「鹿角市の認知度を上げる」ことを目的に、全体的に露出していくことは、最初の2年間としてはよかったのですが、よりしっかりと移住を考えている人たちに届くように情報を発信したいと思っていました。「鹿角牛をプレゼントします」という掲載記事や「こんなおもしろいお祭りがあるよ」という記事だけでは、一過性のものに終わってしまい、そこから移住につながるかというと厳しいのではないかなと。

うしじま:
プロポーザルのお知らせをいただいてから、2017年の4月に企画提案のプレゼンテーションを行った結果、複数社の中からひとしずくを選定していただいたわけですが、私たちの提案のどこが響き、評価していただけたのか、お聞かせいただける範囲で教えていただけますか。

阿部さん:
私たちの出した仕様書上の最低限の数値ではなく、本質的な課題を捉えていただいた点が大きかったと思います。先ほども申し上げた、ただ単に露出するメディアを増やせばいいということではない、というこちらの課題感を認識していただいていました。

ひとしずくさんの提案は、メディアPRについても、こんな切り口で魅せることで移住定住の可能性のある人たちに響くはず、というロジックが表現されていて共感しましたし、鹿角市民を巻き込んで移住定住促進を考えようという提案にも惹かれました。私たちの班ができて3年目のチャレンジングな時期でしたし、同じことを繰り返すよりも、惹かれた提案でとにかく前向きにやってみよう!ということで、選ばせていただきました。

今までの移住フェアやセミナーとは一線を画した東京でのイベント。「関係人口を増やすことにつながったと実感しています」

「BETTARA STAND日本橋」で開催したイベント『地域おこし協力隊のセカンドキャリア~それぞれの選択と挑戦~』

うしじま:
市民の方を巻き込んでのワークショップ、阿部さんとひとしずくでメディア担当者を回ったメディアキャラバン、鹿角市でのプレスツアー、東京でのイベントの開催、メディアに向けたファクトブックの制作……1年弱をかけて、本当にさまざまなプロモーションをさせていただきましたが、振り返ってみて、チャレンジしてよかったと思われる施策はありますか?

阿部さん:
まず大きかったのは、2018年2月4日に、東京の「BETTARA STAND日本橋(※2018年3月末閉店)」で行ったイベントですね。「地域おこし協力隊のセカンドキャリア」と題して、地方移住に興味のある方、地方で起業を考えている方、移住促進に関わる方をターゲットに会費を取って行ったイベントでした。個人的に楽しかったということもありますし、あのイベントによって、移住定住促進班のみんなのフェアやセミナーの捉え方・考え方が変わったと思います。

うしじま:
どのように考え方が変わったのでしょうか?

阿部さん:
今までは、東京など都市での移住フェア・移住セミナーというと、ブースを出展して相談者が来るのを待って、一対一で説明をするスタイルが主流でした。でも、その形式では人が集まらないことも多い、次につながりづらいねと。じゃあどうすればいいのかと、班のみんなで頭を悩ませていたところだったんです。

ひとしずくさんに今回のイベントをご提案いただき、こういうのもありなんだ、むしろこういったやり方こそ求めていた形だったんじゃないかなと思いました。会費2000円でワンドリンクオーダー制でしたが、実際に約30名の方にご来場いただいて盛り上がりましたし、お酒もありつつ、くだけた雰囲気だったからこそ、つっこんだ話もできたと感じます。あのイベントで出会った参加者の中には、その後も継続して連絡を取っている方もいるんですよ。まさに今現在の「関係人口」につながっているという実感があり、あのようなイベントのやり方を教えていただいたのは本当によい経験になりました。

うしじま:
イベントを開催したBETTARA STAND日本橋を運営するYADOKARI株式会社の方々が、その後鹿角市を訪問されたという話もお聞きしました。次につながる関係性ができたんだなと、私たちもうれしく思っていたんです。

阿部さん:
そうですね、今回作ることができた人のつながりは、私たちにとって大きな資産になりました。

もうひとつ、時期が前後しますが、2017年8月27日に、雑誌『ソトコト』編集長の指出一正さんを招いて「カヅノ編集会議」として開催した市民参加型のワークショップも、非常によい経験になったと感じています。

今までは、移住コンシェルジュのひとりひとりが個人で地域に入っていって、住民のみなさんと関係性をつくっていたわけなのですが、改めて住民の方に向けて、移住定住班がどのような取り組みをしているのか伝える場をつくることができたことがよかったなと。

2017年8月27日、鹿角市文化の杜交流館コモッセにて市民参加型ワークショップ「カヅノ編集会議」を行った

うしじま:
「カヅノ編集会議」には、鹿角市民や出身者の方に参加していただき、指出編集長との対話を通じて、意識していなかった鹿角の魅力を再発見する場を作りました。①子育て環境、②起業・創業、③遊び・趣味の3つのテーマについて、その場で参加者の方から情報を集め、編集という観点で切り口や魅力をまとめてポスターを制作しましたね。意外性のあるポスターも生まれ、とてもリアルな鹿角の魅力が伝わってきました。

住民のみなさんといっしょに、鹿角市の魅力を発掘したり、移住定住促進をどうやって進めていったらよいかを考えたりしましたが、その後、住民のみなさんとの関わり方に変化はありましたか?

阿部さん:
そうですね、当初予想していたよりもたくさんの住民の方が参加してくださって。今まで知らなかったパーソナリティを知ることができ、その後声をかけやすくなったというのはあります。ただ、そこはもっと工夫できたなと反省をしています。せっかくあれだけの人に集まっていただいたのに、その先を設計できていなくて、残念だったなと。

うしじま:
そうですね。鹿角市内でもかなり広範囲の方たちに参加いただいて、顔を合わせるのも初めてという住民のみなさんが鹿角市のよいところについて話をして盛り上がっていて、すごくよい空気感でした。私たちもこの方々がコミュニティになっていったらいいなあと思いつつ、そこまでやりきれなくて……今後改善していかなければという点です。

阿部さん:
住民のコミュニティづくりには課題が残りましたが、「カヅノ編集会議」の開催によって『ソトコト』編集長の指出さんとつながりができたことは非常に大きな転換点になったと思います。ワークショップと指出さんからのお話を通じて、「関係人口を増やす」ことの重要性を、私たち移住定住班メンバー全員がきちんと認識できたことで、関係人口づくりをテーマにした現在のプロジェクトにつながったんです。指出さんには今も定期的にアドバイスをもらったり、イベントに出席していただいたりしています。

うしじま:
関係人口、つまり、移住定住の一段階前のつながりづくりですね。

阿部さん:
はい。今はどの地域も移住促進に力を入れていて、人を奪い合うような状況になっているんですね。頭打ちの状態で、何か新しいことをはじめなければいけないと思っていたところでした。ひとしずくさんとごいっしょした一年で、「鹿角市に移住しよう!」というメッセージを前面に出すのではなく、多角的にアプローチすべきということを学びました。その経験により、今私たちが力を入れるべきは、移住につながる一段階前の人たちのコミュニティをつくっていくことだと確信して、現在のプロジェクトに進むことができたと思っています。

「鹿角市ファクトブック」は現在も活用している成果のひとつ。メディアからも好評の声

「鹿角市ファクトブック」。市の概要やアクセス方法のほか、「自然」「文化」「起業」などテーマごとに写真と解説を加え、取材対応者や提供可能な写真一覧も掲載

阿部さん:
制作していただいた「鹿角市ファクトブック」も、今も役立っている成果のひとつですね。いつのまにか当たり前になっていた自分たちの街のよいところを外からの目線によって言語化してもらったことで、外側、主にはメディアの方々に伝えやすくなったと感じています。この間もメディアの方に、こういうのがあるとすごく助かるんです、とおっしゃっていただけました。確かに、いろいろなパンフレットをいくつも渡されても、大枠を掴みにくく、理解するまでに時間もかかるし、困りますよね。
更新もしやすいよう配慮して作っていただいたので、今後も長く使い続けたいと思っています。

うしじま:
それはよかったです。すでにある素材を単純にまとめているだけでなく、実際に現地で私たちが取材したり、体験したりした内容を盛り込むことで、その熱量も伝わっていると嬉しいです。

「鹿角市ファクトブック」やイベント、ワークショップについて、評価をいただいてありがとうございます。逆に、私たちひとしずくに対して、もっとこうしてほしかったなと思われる点はありますか?

阿部さん:
一点だけあるとすれば、スケジュール共有について、というのはありますね。東京でさまざまなメディアの方にアポイントを取ってお会いしていった時、当日まで誰に会えるかわからないということがありました。先方の都合に合わせてのことですし、ギリギリになるのは仕方がない部分はあると思うのですが。

うしじま:
阿部さんに東京に来ていただくスケジュールと日々変わるメディアの方のスケジュール、ひとしずくメンバーのスケジュールを調整することはとても大変でした。同時にイベントや制作も進んでいて、そのスケジュールとの兼ね合いもありました。現状どんなメディアにアプローチしていて、どういう段階なのかをご報告するタイミングをもっとつくるべきでした。

阿部さん:
ただ、全体として一年通じて、非常にアットホームに、親身になって提案いただき、想定以上にいろいろやってくださったと思っています。個人的にもとても楽しく仕事ができましたし、私の上司である阿部課長も、今までとは一線を画す取り組みだったと総評しています。

今、鹿角市では人口減少がはっきりと見え始め、危機を感じ始めている人が増えています。人が減っていくなかで地域をどうしていくか……住民が主体となってちゃんと考えていこうというムードがあり、それは都会にはないことだと思うので、課題ではあるけれども逆にいいなと思う点でもあるんです。

うしじま:
一年ごいっしょして、私自身鹿角市が大好きになりました。今後も、みなさんの活動に注目していき、お仕事でも、お仕事以外でも関わっていけたらと思っていますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。

 
撮影:疋田千里 編集:ちばたかこ

RECENT WORKS

社名ひとしずく株式会社
所在地本社:〒231-0003 横浜市中区北仲通3-33
関内オフィス:横浜市中区相生町2-52-304
東京オフィス:港区芝4-7-1 西山ビル4F
海外拠点:Norra Kyrkogatan 26, Visby, Gotland,
Kingdom of Sweden
電話045 550 4141
FAX045 330 6853
メールinfo@hitoshizuku.co.jp
代表こくぼひろし
設立2016年3月
資本金3,000,000円
事業内容広報及びパブリックリレーションズ代理業
ソーシャルグッドプロジェクトの企画・制作・運営
顧問弁護士丁絢奈(よこはま第一法律事務所)
税務顧問元小出 悟(会計事務所ユニークス)
顧問社労士社会保険労務士法人ワーク・イノベーション