CASE 10
KUMIKI PROJECT株式会社
(2016年6月〜2019年2月)
「本当のゴール」を探す旅を、ひとしずくとともに
DIT(Doing it together=ともにつくる)をコンセプトに、暮らしを自らつくる人を増やしていくことをめざし、セルフリノベーションワークショップを全国でプロデュースする「KUMIKI PROJECT(以下KUMIKI)」。代表を務める桑原憂貴さんとひとしずくのこくぼが出会ったのは約10年前、前職でのPRの仕事を通じてのことでした。お互いが起業してからは、それぞれの領域において助け合うパートナー関係を築いています。桑原さんに、ひとしずくとともに歩んできたこれまでとこれからのお話をうかがいました。
「PRは魔法の杖ではないと教えてもらった。マスメディアにのることはゴールじゃないんだなと、今痛感しています」
ひとしずく担当者 さとうりえこ(以下、さとう):
KUMIKIさんには弊社オフィスのリノベーションも担当していただきましたし、逆に弊社がKUMIKIさんのPRのサポートをしたり、先日のKILTA YOKOHAMAで開催されたイベント「ひびのて」にひとしずくが出展させていただいたりと、設立以来ずっと協働してきたパートナーであり仲間のような存在です。
今回は改めて、ひとしずくにご依頼いただいたPRについての振り返りと評価をいっしょにさせていただきつつ、KUMIKIや桑原さんがめざす社会がどんなものなのか、また今後ひとしずくと一緒に取り組んでいきたいことなど、未来に向けてのお話もうかがいたいと思っています。
KUMIKI PROJECT株式会社 代表 桑原憂貴さん(以下、桑原さん):
ひとしずくさんにお願いしたPRとしては、まずはリリースを書いていただいたんですよね。2016年、KUMIKIのサービスを始める際のプレスリリースと窓口を担当していただきました。
その後、2018年の夏の終わり、誰でも使えるDITの拠点として横浜にオープンした「KILTA(キルタ)」のプレスリリースを、スピーディーに的確に出してもらいました。こちらは結果として毎日新聞に掲載されて、とても効果的だったと感じています。こんな場所ができるので利用してほしい、ということを周辺企業にプレゼンして回ったのですが、その時にメディアに掲載されている状態を作れたことで説得力が増しました。
さとう:
ひとしずくに依頼してよかったこと、逆に、もう少しやってほしかったことなどはありませんか?言いにくいかもしれないのですが。
桑原さん:
PRはとはいえ魔法の杖ではなく、積み上げていくもので、リリースを単純に一度出しておわりではない、ということをこくぼさんからチームのみんなに伝えてもらったのはすごくよかったなと思っています。
当時僕のゴール設定は、マスメディアに掲載されることでした。ですから先ほど言ったように、新聞に掲載されたことでゴールは達成できたわけです。でも今になって、本当のゴールはそこじゃないなと痛感していて。
KILTAが地域の人たちに愛されて、利用してもらい続ける場所になるために、継続的にどういったコミュニケーションをしていくのか、というのが本当の課題なんですよね。そういった全体を見据えたゴール設定のなかで、今はこの段階で、この予算だからここをやっていこう、という整理をしていくことが必要で、これからきちんと実行していかないといけないと思っています。
今まさに、地域の人たちにどうやって知ってもらうのか、ということがKILTAの課題としてあがっていることなんです。地域に住むお母さんたちがふらっと来て利用してくれるにはどうしたらいいのか。メディアを見て外から訪れてくれる人は増えていて、それはそれで嬉しいのですが、近隣の人たちが置き去りになっている感覚がある。
僕含め、そういったゴールを明確に持てていない事業者というのは多いのではないかな。情報を発信したあとに辿りつくべき場所がどこなのか。KILTAのリリースの際には時間がなく、突き詰めることができなかったのですが、ひとしずくさんと一緒にもっと考えることができたらよかったなと思っています。
さとう:
ゴール設定って、私たちとしてもいつも悩むところで、確かに、もっと時間があれば丁寧にできたところですね。ゴール設定をして、そのゴールをパートナーさんと私たちの共通認識としてきちんと落とし込んでから始めないといけない。それがないと、PRできているのかなと私自身不安になることもあるし、パートナーさんがこれでいいのかと迷っているのを感じることもあります。
桑原さん:
めざすべきところってここでしたよね、というのを一緒に考えて、時折言ってくれる存在って心強いですよ。中からだと見えなくなりがちなことでもあるし。ゴールとともに、ちゃんと目的に向かって進んでいるのかを振り返るポイントが何かという設計もできたらよかったなと思います。
今、PRとは別のことですが、デザイナーさんなど外部の方といっしょに仕事をしていくときに、自分たちのなかで共通する評価基準を持っていないと、チームとしてプロジェクトを動かしていくのが難しいなと感じています。目的と、そこに至るまでの階段の設計は、多くの人と連携していく上でも必須のことですよね。
DITのための拠点、シェア工房「KILTA YOKOHAMA」。1周年イベントを経て、親子が気軽に利用できる場所への一歩を踏み出した
さとう:
2018年11月25日にKILTA YOKOHAMA1周年イベントとして開催された「ひびのて」には、ひとしずくもCHART project(R)の展示、ワークショップで参加させていただきました。トークあり、DITワークショップありの充実したイベントで、私自身参加して、すごく空気感がよいなと感じたし、居心地がよくて、あのイベントに参加された方はみんなKILTAが好きになったのではないかなと思います。
とくに、子ども連れのお母さんたちがすごく活躍されていたのが印象的でした。こんな風に働いている姿を子どもに自然に見せていいんだなと、私としてはとても勉強になったというか、感動したというか。
桑原さん:
ありがとうございます。僕としてはもっとこうできた、したかったというのはあるんですが、いただいた感想でまさによい空気感だったというのがすごく多くて、反省しているのは僕だけなのかもしれないと思いました(笑)
お母さんたちの活躍については、僕というよりも、「ひびのて」を共同主催した「非営利型株式会社Polalis」さんの力が大きかったと思います。僕自身は子どもがいないですし、働くお母さんたちと協働していくときにはいつもとは違う進め方を考えないといけないと課題を見つけましたし、子ども相手のDITワークショップでは足りていないことが多々あると知ることができたイベントでした。僕自身葛藤はいろいろありましたけど、KILTAは、そういったお母さんたち、子どもたちに利用してほしい場所だからやったというのはあって、その後の転機となるイベントだったと思います。
「言語の異なる人たちに架け橋をかけないと社会は変わらない。今後ひとしずくと取り組んでいきたい部分です」
桑原さん:
KUMIKI PROJECTは、「はじめやすい社会をつくりたい」という思いでやっている活動です。お金がないと自由がない、やりたいことが形にしにくい、という空気感が世の中にはある。でも、みんなでつくることでかかるお金が少なくなってはじめの一歩を踏み出しやすくなります。
はじめの一歩に必要なのは、ともにつくってくれる人たちの存在。日本中の人がともにつくってくれたら、はじめやすい人がいっぱい出てくるわけです。その「ともにつくる人」を増やすのが、シェア工房「KILTA」のめざすことです。「自分のくらしを自分でつくるのを楽しむ人」と「暮らしをつくる技術を教えて支えたいひと」この2種類のひとを増やすための拠点だと思っています。
でも、KILTAもうまくいくのか、正直わからないところがあるんですよ。今は、個人会員からは年会費1万円をいただいていつでも使い放題としているのですが、月謝制にしたほうがいいのかな、とか議論は続いています。なるべく個人からお金をとらず、誰でも通える、地域の場所になっていくにはどうしたら良いのかなと常に考えています。
さとう:
桑原さんのSNSを拝見していると、試行錯誤や葛藤を常に発信されていますよね。
桑原さん:
僕は、仕事のことも全部オープンでいいかなと思っていて。事業活動も、人間の毎日の暮らしと同じ。困っていたら言ってみて、助けてもらえたら助かるし。出せるものは出していいかなと思っているんですよ。
さとう:
プロセスを見せていくことは、PRの世界でも今すごく求められていることだと思います。積み重ねの世界というか、今はログがすべて残るし、問われる時代ですよね。SNSはまさにそうです。難しいことではありますが、ずっと一貫して続けていると、それは信頼にもつながりますね。
桑原さん:
SNSは僕にとって、一年前自分がどう思っていたか振り返るための羅針盤であり、人に見られているからこその律する道具という二面性がありますね。発信に共感していた方と仕事をする時には、スピーディーに仕事が進むなど、今のところよい影響を及ぼしています。
一方で、SNSだけではアプローチできない人がいるのも事実ですよね。SNSは共感しやすい人がつながる世界だから。だから、あの世界はとても危険だとも思っています。
例えば、先ほども触れましたが、子育て世代のこと僕は全然わかっていないんですよ。つながっていないので。だからそういったところは、プロであるひとしずくさんといっしょにアプローチしていきたい部分なんです。
僕らの「ともにつくることが大事」という理念を届けたい相手は誰なのかというと、第一段階はそこに共感する人たち。でも、その次に届けたいのは、全然理解を示してくれない人たちだと思うんですよね。コンビニでごはん買って食べれば早くていいじゃん、ともにつくるとか何それ、その時間無駄じゃない?って言っちゃうような人たちだと思うんですよ。
そういう人たちに届かないと、社会はきっと変わらない。似たような感覚の人たちにいいねを押してもらって気持ちよくなって終わってしまう。言語の違う人たちに、僕らのやっていることや大事にしていることを、そちら側の言葉で、でもブラさずにいかに伝えられるか。架け橋をかけることがこれから大事になっていくと思っています。でも、そのやり方が今はまだわからない。だから、きっとこの先、そういったところをひとしずくさんにご相談することになるだろうなと思っています。
さとう:
私たちも、もっと勉強しないと。これからも、PRの領域から「ともにつくる」を支えていきたいと思います。今後もよろしくお願いします。
撮影:柳井隆宏 編集:ちばたかこ
RECENT WORKS
社名 | ひとしずく株式会社 |
所在地 | 本社:〒231-0003 横浜市中区北仲通3-33 大磯オフィス:神奈川県中郡大磯町大磯636-1 |
電話 | 045 900 8611 |
FAX | 045 330 6853 |
メール | info@hitoshizuku.co.jp |
代表 | こくぼひろし |
設立 | 2016年3月 |
資本金 | 3,000,000円 |
事業内容 | 広報及びパブリックリレーションズ代理業 ソーシャルグッドプロジェクトの企画・制作・運営 |
顧問弁護士 | 丁絢奈(よこはま第一法律事務所) |
税務顧問 | 元小出 悟(会計事務所ユニークス) |
顧問社労士 | 社会保険労務士法人ワーク・イノベーション |