CASE 36

公益財団法人 日本財団

(2022年7月1日〜2024年3月31日)

NPOの現場に寄り添い、各地域の状況に合わせた方法で支援してもらえた

日本財団は、国境や分野を超えて社会課題解決をサポートする日本最大規模の社会貢献財団です。日本財団は事業のひとつとして、すべての子どもたちが将来の自立に向け、生き抜く力を育むことのできる「子ども第三の居場所」の開設に2016年から取り組んでいます。2022年度から後方支援を行い、2023年度は、数ある「子ども第三の居場所」中から3拠点における広報活動全般のサポートをひとしずくが担当しました。広報に関する当初の課題意識やサポートの成果などについて、お話を伺いました。

NPO勤務経験者が多く、サポート実績もあるひとしずく。NPO目線に立った広報サポートに期待した

ひとしずく担当 かねこまみ(以下、かねこ):
今回は、日本財団さんとお付き合いのあったPR会社の方がひとしずくを紹介くださり、「子ども第三の居場所」事業の一部をサポートしました。数多くの分野にわたり社会課題解決をサポートする、日本最大の社会貢献財団として知られる日本財団のプロジェクトにお声がけをいただき、嬉しく思いました。ありがとうございます。
まず、「子ども第三の居場所」事業について概要を教えてください。

日本財団 公益事業部 子ども支援チーム 飯澤幸世さん(以下、飯澤さん)
「子ども第三の居場所」事業は2016年にスタートしました。省庁が行った複数の調査を分析したところ、単純計算になりますが小学生のうち、3人に1人は、経済的、家庭的、学校生活における困難等、なんらかの困難を抱えているという結果が出ています。これらの困難は家庭や学校だけでは解決することが難しく、家庭や学校の代わりに子どもに寄り添って支えることができる「第三の居場所」を増やすことがこの事業の目的です。食事や基本的な生活習慣が整った環境で、学習支援や体験プログラムを通じて子どもたちが安心して「生き抜く力」を身につけることを目指しています。各拠点は規模もさまざまで、NPOや社会福祉法人など非営利団体が運営しています。日本財団は中間支援組織として各拠点の運営サポートを行っています。

かねこ:
広報のサポートをお声がけいただいた際は、どのような課題を感じていらしたのでしょうか?

飯澤さん:
居場所を運営する団体さんの広報力を強化していく必要性を強く感じていたためです。
現在は200以上の拠点があるのですが、広報活動の業務委託を検討していた時は約100カ所でその数を増やしていくことを事業目標にしていました。そのためには「子ども第三の居場所」事業について正確に広く伝えていく必要があり、居場所づくりを行いたいという担い手を増やす必要がありました。また、居場所の存在が、それを本当に必要とする子どもには届いていないのではないかという懸念もありました。夏休み明けの9月になると「子どもの居場所がここにあるよ」というSNS投稿が増えその事がニュースになっているのを見かけます。本当に家にも学校にも居場所がない子どもたちが行ける身近な居場所があってこそ、はじめてそういった報道や発信が無くなっていくと思うんですね。
子どもたちが第三の居場所で過ごすことで、家庭や学校には無かった選択肢を広げることができて、成長に向かっていくことをサポートできる可能性はまだまだあると感じました。居場所について社会に広く伝え、社会課題解決につなげたい想いも強くありました。

かねこ:
情報発信を実際に行うのは各拠点を運営する団体の方々なので、拠点での取り組みだけでなく居場所事業の全体像を理解して発信する必要性もありましたね。

飯澤さん:
はい。各拠点と日本財団の広報への意識合わせも必要でした。くわえて、各拠点で運営スタイルも規模も様々でしたので、それぞれに合った広報サポートを行うことが必要でした。

かねこ:
もともと、ひとしずくのことはご存知でしたか?

飯澤さん:
私が以前、別のNPOに所属していた時に、ひとしずくの代表のこくぼさんがとあるNPO向けの広報研修に登壇されていたので知っていました。別の日本財団の事業「海と日本プロジェクト」でもひとしずくさんとご一緒していたことがあったので、スタッフの中には知っている者もいましたよ。

かねこ:
私もそちらの事業にも関わっていたので、またご一緒できて嬉しく思いました。広報に関する課題があった中、ひとしずくにはどのようなことを期待してくださっていたでしょうか?

飯澤さん:
予算的な観点から、PR会社に広報を依頼できる非営利団体はなかなかないと思います。そのような事情もあり、非営利団体と仕事をしたことがあるPR会社はそれほど多くないと思います。
また、各居場所を運営する団体の多くは少ない人員で多忙に業務をこなしているという事情もあります。実際、他の業務と広報業務を兼任している、あるいは広報担当者がいないという状態が多いです。サポートする側の人間が、現場の状態を理解して、同じ視点に立てなければ今回の広報サポートは失敗してしまうことが目に見えていたんですね。
さらに、私たちが目指していたのは、広報の発信力を、団体の皆さん自身が身につけることでした。NPOへ勤めていた方も多く在籍し、多くのサポート経験があるひとしずくなら、NPO目線に立った広報サポートをしてくださるのではと期待していました。

人のつながりを大切に、それぞれの団体に合わせた広報サポートをしてもらえた

かねこ:
今回のサポートはご紹介いただいたPR会社さんとひとしずくのチームで取り組みましたが、そのプロセスや結果に関する感想はいかがですか?

飯澤さん:
居場所を運営する各団体さんにしっかり伴走してくださった点は本当に良かったなと思っています。他の方だったらここまでできなかったのではと思うくらい、信頼関係をつくってくださいました。業務の話だけをしていると雰囲気が固くなってしまいがちなのに、ひとしずくさんだと不思議とそうはならない。代表のこくぼさんはボーダーのお洋服をいつも着てらっしゃいますよね。こくぼさんにお会いする時に、ある拠点のメンバーは全員ボーダーを毎回着ていて(笑)。なんだろうこの信頼関係は!と見ていました(笑)。

かねこ:
とてもほほえましい瞬間でしたね(笑)。

飯澤さん:
その様子を見ていて、広報スキルを持っていること以外のひとしずくの良さがにじみ出ている気がしました。寄り添っている感が強いから、各拠点の方々も安心できたのだと思います。

かねこ:
「寄り添う」ことは私も日頃から心がけています。広報サポートをする時に、「発注側」「受注側」の壁をつくらないことが大切だと思っています。一方的に「これやってくださいね」という態度でいるとサポートは上手くいかないし、サポートを受ける方々もやらされ感がある。私自身、NPOに所属していた経験もあり、そのような関係でサポートはしたくないと思っていたので、常に各拠点の方と一緒になって広報活動に取り組んでいました。

飯澤さん:
サポートする側とされる側が、程よい距離感なんですよね。色々手をかけすぎると、NPOの広報力の強化にならないし、かといって距離が遠すぎるわけでもない。この距離感が絶妙だったと思います。それぞれの団体さんに合わせたサポートができるのは、広報のノウハウを知っているからできることではなく、人のつながりを大切にしてくださっているからなのだなと感じました。かねこさんは、1年間サポートしてみてどんな点が印象的でしたか?

かねこ:
とある拠点の方々が、最終的に広報に楽しんで取り組むようになった姿が印象に残っています。ひとしずくとの定例会議の後も、自主的にメンバーでブレストをしたという話も伺って。広報も楽しまないと続かないと思いますし、自分ごととして取り組んでくださったことはとても嬉しかったです。

飯澤さん:
着実にノウハウを獲得した感じがありましたよね。例えば、毎年同じところに行っていた社会見学を、広報的観点で「何のための社会見学なんだ」というところから考えて、新しい社会見学先に切り替えたり、広報以外の活動に関しても、学んだ姿勢というのが活かされて良い影響を与えているなと思います。

かねこ:
そうですね!伴走した1年間はとても短くあっという間に感じました。月1回のミーティングも、オンラインで実施していたので、実際に現地にお伺いし、対面でできたらもっと良かったなというのが反省点です。またご一緒できる機会があったら活かしたい点です。

子どもの声を活かし、より心地良い居場所づくりを目指したい

かねこ:
ご依頼いただいた際には色々な課題があったかと思います。1年間にわたる広報サポートの後、飯澤さんが感じた変化はほかにもありますでしょうか?

飯澤さん:
2024年の4月に、とあるテレビ局が、子どもの居場所特集を行ってくださいました。その内容が「子ども第三の居場所」についてしっかりと伝わる内容になっていると感じることができました。居場所を運営する団体さんもしっかりと「子ども第三の居場所」事業について語ってくださっていましたし、テレビ局の方もそのことをきちんと理解して取材してくださっているのが伝わってきました。自分たちの活動を自分たちで嚙み砕いて言語化できるようになっていることを実感できた出来事でした。

かねこ:
理想的な形でしたね!私もとても嬉しく番組を拝見しました。少しずつ居場所にも変化が現れていると思いますが、今後、日本財団として取り組んでいきたいことについて教えてください。

飯澤さん:
2023年、こども家庭庁が決定した「こどもの居場所づくりに関する指針」は、各市町村が子どもの居場所づくりを計画的に推進していくことを求めています。今後、子どもの居場所づくりについては、民間も公的機関も含めてどんどん加速していくだろうと思っています。当初課題だと捉えていた「居場所づくりの機運醸成」に関しては、ある程度達成できたと感じています。
今後私たちが注目していきたいのは居場所の「質」です。子どもが行ける場所が増えることはとても良いことですが、中でも本当に困っている子どもたちが行ける場所を増やしていくことが重要です。そのためには、居場所の価値についてもっと広く伝えていくことが大切だと思います。

かねこ:
各地域に子どもの居場所が増えていくといいなと本当に思います。そのほか、取り組んでいきたいことはあるでしょうか?

飯澤さん:
2016年から「子ども第三の居場所」事業が始まり、2024年現在は、初期から通っていた子どもたちが中学生、高校生になっているタイミングです。実際に利用していた子どもから見た居場所の価値を話していただけるタイミングではないかと思っています。これまでは、居場所を増やし、全国に拡大することに注力してきたので、その成果を振り返るタイミングも必要だと思います。

かねこ:
そうですね。子どもたちと居場所で働いている方々の関係性が見えるようなお話しが聞けたら素敵ですね。

飯澤さん:
通い始めて時間が経ったからこそ、改めて言語化できたり、振り返れることもあるのではないかと思います。子どもたちの声が居場所づくりを行う方々にとってモチベーションアップに繋がったり、今後の運営の参考になったら素晴らしいですね。

撮影:ほりごめひろゆき 編集:つじはらまゆき

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