CASE 02
特定非営利活動法人日本森林管理協議会(FSCジャパン)
(2017年4月〜2018年9月)
広報の土台作りからともに取り組み、活動を発信していく大きな一歩に。
FSC(R)ジャパン(特定非営利活動法人日本森林管理協議会)は、世界でもっとも厳しい森林認証「FSC認証」を運営する国際的な非営利組織FSC(Forest stewardship Council(R)森林管理協議会)の日本事務局です。ひとしずくにご相談があったのは、2017年3月頃でした。FSCジャパンで広報を担当されている河野(こうの)絵美佳さんとともに、案件を振り返りました。
広報担当不在から、「FSCジャパンにとっての広報」を改めて考え直した一年半。
ひとしずく担当者 かねこ(以下、かねこ):
最初どのような経緯があって弊社にご相談いただいたのでしょうか。例えば、広報体制を強化する必要を感じていらっしゃったなど、課題認識のところをお伺いできますか。
FSCジャパン 河野さん(以下、河野さん):
ご相談をする前、私たちFSCジャパンには、広報担当者というポジションが存在していませんでした。そもそも広報とは何かということすら、私たちの中に明確な概念として存在していなかったんです。
これまでは、イベント等を開催する時に、どのような設計にするか、どう告知するかなどを団体内のコミュニケーションアドバイザーに相談をしていました。でも、その方と戦略を立てるなかで、イベントを実施するだけでなく、「実施したことをどのように世の中に広めるのか」という広報的な展開がまったくできていなかったことに気がつきました。
「PR」=「広告を載せるために、たくさんお金を払う」という発想しかなかったのですが、限られた予算の中でもメディアに載せてもらったり、広告掲載ではない方法で広報・PRができないか、という話になり、そのアドバイザーの方にひとしずくさんをご紹介いただきました。
かねこ:
その際は、お声がけいただいてありがとうございました。今になって振り返りますと、「一般的にいう広報とは何か」また「FSCジャパンさんにとっての広報が何か」ということが明確になっていない中で、業務がスタートしました。正直そのあたりの戸惑いのようなものはありませんでしたか?
河野さん:
たしかに、私としてはすごく戸惑いがありました。最初は「広報ってなんだかよくわからないけどとりあえず助けてもらおう」と依頼内容がもやっとしていて、何をやってほしいのかを明確にすること自体が難しいかったですね。何を頼める会社さんなのか、どこからどこまでお願いしてよいのか、その範囲の線引きがよくわからなくて。
私たちのような広報のプロフェッショナルがいない団体は、「広報とは何か」ということ自体を説明いただければ入っていきやすいのかもしれないですね。私自身が考えている「広報」と、団体内のほかのスタッフが考えている「広報」にも違いがあったとも思います。ひとしずくさんと仕事をするうちに、そのことにだんだん気がつきました。
かねこ:
今は、「FSCジャパンさんにとっての広報とは何か」、クリアになっていますか?
河野さん:
大丈夫です。一年半を経てすごくクリアになりました。ひとしずくさんに広報サポートをお願いしてから、1年経ったくらいでお互いの考える「広報」の指す内容にすれ違いがあることに気づいて、正直に今何を考えているか話し合った時がありましたよね。あのあたりでだいぶ整理できた感じがありました。その時、私も広報関連の書籍を2冊ほど読むなどもしました。その時は、最初から読んでおけばよかった!なんて後悔しました。
かねこ:
一般的な「広報」の考えというのはあるのですが、弊社としてはどこまでが広報の範囲かをあえて決めてこなかったところもあります。団体さんによって広報の重要性や立ち位置は違いますし、FSCジャパンさんの場合は、認証団体さんや企業さん、林業関係者の方々など多様なステークホルダーがいらっしゃいます。どこに重きを置いてコミュニケーションをとるのかというのは、こちらとしても1年半パートナーとして仕事をさせていただいて、ようやくクリアになったと思います。
戦略づくりからキャンペーン運営まで多岐に渡りサポート。「客観的かつ広報的視点からの助言が役に立ちました」
かねこ:
具体的なサポートとして、広報戦略定例会議の開催やプレスリリース作成・配信、SNS運営のガイドラインや記事制作、イベントやキャンペーンの企画運営などを行いましたが、その進行のプロセスや結果についてはどのように感じていらっしゃいますか?
河野さん:
全体を通して、広報はタイミングが命の業務なのだとよくわかりました。そして適切なタイミングで発信するためには、前もってステークホルダーの方々との調整に手間と時間をかけて準備をする必要があります。私たちの団体は関係者が多い分、資料一つ作成するにも本当に時間がかかってしまいました。
かねこ:
そうですね、こちらもそのあたりのご調整を河野さんにお任せきりにしてしまっていたところがあったので、もっと直接入り込んでサポートする必要があったと思います。
河野さん:
その反省を活かして、最近は直接やりとりいただいているのが実際のところすごく助かっています。ただそのあたりもどこまでやるのかの線引きは難しいですよね。
こういう場合はどうするんですか?みたいなことを気軽に電話とかメールで相談できるのもすごく助かっています。自分ではなかなか調べようがないので。
今年パンフレットのリニューアルもしましたが、私だけでは選んだ言葉が一般の方に理解されるかどうかという感覚がわからなくなっているので、客観的なアドバイスは助かりました。また、ブランディングとして、打ち出すメッセージは統一したほうがよい、との言葉は、私自身は持っていなかった考えだったのでハッとさせられました。パンフレットとは別に、FSCジャパンの概要をまとめたファクトブックを作ることができたこともひとつの成果だったと思います。団体内でも情報がバラバラに存在しているので、私たちがどんな情報を持っているかを整理できました。
かねこ:
ファクトブックは、定期的に見直しをして、常に最新のファクトに更新していけば、取材対応の際など永続的に活用できるFSCジャパンさんの財産になると思います。
河野さん:
発表イベントの振り返りをしていただけたのも、客観的な視点をいただけたので助かりました。なかなか、自分たちだけだとイベントをやって終わってへとへとになってしまって、振り返りまでできないので。
また、FSCの認知度向上を目的としたキャンペーンの協賛を協力企業のみなさんに募るにあたり、協賛企画の土台を作っていただいたことはありがたかったです。協賛を募る、というのは初めての試みで、何から始めていいのかまったく情報を持っていませんでしたので。このキャンペーンは今回の取り組みをベースにしつつ、来年はもっと工夫できそうな気がしています。トライアンドエラーでやってみながらじゃないとわからないところもありますね。
本当に多岐に渡って力を貸していただきました。ただ、最初の話に戻るのですが、PRの本来のお仕事の範囲外の部分を頼んでしまったところもあったのかなとも思っています。たとえば、イベントを専門にやっている会社さんに最初から依頼する方法もあったのかもしれないと。
かねこ:
我々としては、FSCさんにとっての広報というのは、広い意味でのPR=パブリックリレーションズだと思っています。FSCジャパンさんの利害関係者、つまり林業や工務店関係者さんから工場、製造、加工工場、製品の小売、その先の購買者の方まで、また会員の方々も含めて、すべてのステークホルダーに対して、良好なコミュニケーションをするということです。
その意味で言うと、今回の協賛企画も、企業の皆さまとのより良い関係づくりというところで言うとPRに入るとは思っています。ただ、広報戦略としてFSCジャパンさんはどこに重きをおくのか、こちらも探りながらやらせていただくところもありました。我々も事業領域をあえて決めておらず、説明も不足してしまったために、混乱をさせてしまった点は申し訳なかったと思います。
コミュニケーションの課題に関して、FSCジャパンさんが向き合って困っているところはお手伝いしたいですし、こちらでどうしてもできない範囲は、どこか別の会社さんと一緒にやる、あるいはご紹介するなど協力をして、解決に向かっていければいいと思っています。
河野さん:
そうですね。どこからどこまで、というのを明確にして、お互いに無理をせず、それぞれが得意なところを出し合ってやった方が絶対に良いと思います。
各社と協力しながら実施していることを、1つの大きな取り組みとして見せることができた。
かねこ:
弊社と協働したことで、課題は解決に向かって進むことはできたでしょうか。社会課題はすぐ解決に向かうということはなかなか難しいとは思いますし、答えるのが難しい質問だとも思うのですが。
河野さん:
例えばキャンペーンに関して、これまでは実施したことを1つの活動として見せることができていませんでした。その点今年は1つのサイトにまとめたり、SNSで常に発信したりして、外部から見て何をしているのかわかるように見せることができたと思います。効果測定は難しいのですが、関心を持っている方々にはある程度、各社が協力してイベントやプログラムを実施していることを伝えることができたのかなと思っています。
まずは一部の方にだけでも、FSC認証の取り組みを印象づけることができたとすれば、その方々が一層FSCの認知を上げていくためのハブになってくださるはずです。ひとしずくさんと取り組んだ発信力の強化は、森林を守りながら使用していくという森林認証の考え方を広めていくための新たな一歩になったのではないかと思っています。
今後は、もっと協力企業の各社さんが参加しやすいしくみも考えつつ、効率よくキャンペーンを行える方法を探っていきたいなと思います。毎年継続して実施していくには、例えばオンラインツール中心に展開するなど、マンパワーをかけずにどうやって多くの方に伝えるかは今後の課題です。でも、ひとしずくさんとともにキャンペーンをやってみて、やってみないとわからないことがいっぱいあるなと実感しました。この一年を土台に、恐れずにどんどん挑戦していきたいと思っています。
撮影:疋田千里 編集:ちばたかこ
RECENT WORKS
社名 | ひとしずく株式会社 |
所在地 | 本社:〒231-0003 横浜市中区北仲通3-33 大磯オフィス:神奈川県中郡大磯町大磯636-1 |
電話 | 045 900 8611 |
FAX | 045 330 6853 |
メール | info@hitoshizuku.co.jp |
代表 | こくぼひろし |
設立 | 2016年3月 |
資本金 | 3,000,000円 |
事業内容 | 広報及びパブリックリレーションズ代理業 ソーシャルグッドプロジェクトの企画・制作・運営 |
顧問弁護士 | 丁絢奈(よこはま第一法律事務所) |
税務顧問 | 元小出 悟(会計事務所ユニークス) |
顧問社労士 | 社会保険労務士法人ワーク・イノベーション |