CASE 04

公益社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)

(2017年10月〜)

国も事業も関わる人も多様な活動をどう伝えるか。
内部コミュニケーションなくして発信はできないと気づいた。

1981年の設立以来35年以上に、アジアの子どもたちへの教育支援や緊急救援活動を行なってきたNGO、シャンティ国際ボランティア会(以下シャンティ)。NGO団体として事業規模、職員数ともに規模が大きな団体といえるシャンティは、支援先の国や事業が多様であるがゆえに、団体としての戦略的な広報に課題を感じていらっしゃったといいます。シャンティ広報課課長担当の鈴木晶子さんに、お話を聞きました。

「情報の優先順位がつけられず、内部だけでの広報戦略づくりに限界を感じていました」

シャンティ国際ボランティア会 広報課課長の担当の鈴木晶子さん

ひとしずく担当者 たかはし(以下、たかはし):
私たちひとしずくに相談いただいた時、どのようなことに課題を感じていらしたのでしょうか。

シャンティ広報担当 鈴木さん(以下、鈴木さん):
2015年11月に広報課課長担当になってから、シャンティとしてのメッセージや軸をどう出していくか、見えていないと感じていて。漠然と広報を強化しなければという焦りを感じていました。周囲からも早く戦略を作ったほうがいいと言われていたのですが、組織内でも広報戦略作りは急務の課題という認識があったとはいえ、どのように作るべきか悩んでいました。色々と模索してみたのですが、自分たちでやれる範囲にも限界を感じていた時に、ひとしずくさんをご紹介いただいたんです。

たかはし:
なるほど。団体内部だけで戦略をつくることの限界とおっしゃいましたが、どんなところでそれを感じたのでしょうか。

鈴木さん:
私たちシャンティは、関わっている国も事業もたくさんあり、今まではそれらを並列に発信してきました。その結果、シャンティとして何をしているのか見えにくくなってしまっていました。いざ優先順位をつけようとすると、私自身も内部の人間ですし、どれも重要に思えて…。内部だけで軸や優先順位を決めるというのは限界があるから、客観的な外からの目線での判断軸の必要性を痛感していました。

あとは、広報戦略をどのように作っていくべきかという疑問への答えを、内部から得ることはむずかしかったということがあります。ほかのNGO団体と広報について情報交換する機会も持っていたのですが、どこの団体も同じように悩んでいて。広報の手法は他団体と学び合えますが、私たち自身の広報の軸をつくる部分というのは、共有できるものではありませんよね。

だから、外部でありながらもいっしょに併走してもらえる方が必要だなと私は思っていたので、ひとしずくさんには本当にぴったりのタイミングで、求めていた方々に出会えたなと思いました。

たかはし:
私たちひとしずくが加わることで、悩まれていた課題は解決に向かっていっていますか?

鈴木さん:
どのような広報を行うべきか、広報における課題なのかということを当初洗い出した際に、団体としての課題の要点を的確に指摘していただきました。目標意識やブランディング、データ収集の仕組み、内部コミュニケーション等について、課題が明確になり、執行部や他部署にも理解が広がったことで、団体をあげて広報を強化していこうという意識醸成につながったと思います。

悩み続けることが広報の仕事なのかもしれない

ひとしずく担当のたかはしあすか

たかはし:
2017年からごいっしょさせていただいているのですが、現状でまだできていないと感じている部分はどんなところがありますか。私自身、やりきれていないなと思うことはいろいろあるのですが……

鈴木さん:
そうですね、私たち自身も足りていないと思うことはたくさんあります。課題を正しく認識して手をつけ始めたものの、課題そのものが、大きかったな、根深いものがあったなと感じています。ある程度は覚悟していたのですが、予想以上でした。

とくに内部での決定プロセスは大きな課題ですね。その時々の情報の優先順位を決めることがやっぱりむずかしい。私自身、常に悩み続けています。

たかはし:
私が言うのもどうかとは思うのですが、私もいつも悩みます。世の中が日々変わっていくなかで、昨日の決断が今日になって正しいのか、とか、最近は広報に関しては常に悩み続けることが仕事なんじゃないかと思えてきています。

鈴木さん:
たかはしさんもそうなんですね! とくに、私たちみたいな団体は、本当に正解がないですし、間違いもないので悩むことが多いです。行なったことについて、切り口を変えたらまた違う表現や見せ方が無限に生まれてくるんです。そして、これもありなのかもしれないと悩むのですが、答えが出ないこともあります。

広報戦略や発信する軸をつくる、という課題の解決はなかなかむずかしい、とやってみて実感しています。ただ、このようにひとしずくさんとディスカッションして悩みを共有しながら進められるのは、すごくありがたいし、価値があると思っています。

たくさんのステークホルダーの想いをどう形にするのか。インナーコミュニケーションこそが、広報の基礎にある

鈴木さん:
どんな団体もそうだと思うのですが、みんなの想いをどうやって形にしていけばよいのだろう、といつも考えています。今シャンティにいるスタッフはもちろん、活動を支えてくださっている方々、これまで活動していた方々、パートナーとなって活動している専門家のみなさんなど、ステークホルダーがたくさんいます。そんな人たちの想いも含めながら、広報の軸や打ち出していくメッセージを作っていきたいと思うのですが……いっぱい詰め込もうとするとまとまりきらないし、その時々でいろんな人の想いを発信してしまうとメッセージがぶれてしまいます。

団体としてのメッセージをみなさんに周知して、同じ感覚で発信していくためのコミュニケーションこそ難しいなとも思います。広報って対外的なメッセージを作っていく部署ですが、じつはインナーコミュニケーションがすべての基礎にあり、それがなければ外へのメッセージも作れないんですよね。
シャンティに関わるひとりひとり、何を大事にしているのか、どこに想い入れがあるのか異なるので、何かひとつだけを取る上げることはむずかしい。形のない価値観を形にしていくことは、必要だけど悩ましいですね。

たかはし:
本当にむずかしい課題に取り組んでいらっしゃると思います。そんななかで、私たちひとしずくはちゃんと力になれているでしょうか。

鈴木さん:
まずは、よくおつきあいいただいて、ありがとうございます(笑)。日々の悩みごとに巻き込んでしまっていますが、私としてはすごく心強いです。ブランディングから始まって、イベントをいっしょに開催したり、いっしょに進んでいる感覚がすごくあって、その感覚は当初は想定していなかった部分ですね。

こちらが悩んでいることの幅広さに対して、それをいったん受け取っていただけることもありがたいです。NGOの広報って少ない人数でやらないといけないので、担当領域が広いのです。ここの領域ならやれるっていう人や企業さんは多いと思うのですが、総合的に少数人数数人ひとりで進めているなかで、一部を切り出して依頼すること自体がもはや無理なんです。そこのところをよく理解していただいて、広い面で見ていただきつつ、みなさんの経験や人脈をいつも惜しみなく提供してくださるのは本当に助かっています。

伴走していただいているからこそ、もっとお互いにできることがあるのでは、と思うこともあります。思っていることは、どんどん伝えていただきたいし、私たちのことをもっと知ってほしいという気持ちも強くあります。引き続き、よろしくお願いします。

 
撮影:疋田千里 編集:ちばたかこ

RECENT WORKS

社名ひとしずく株式会社
所在地本社:〒231-0003 横浜市中区北仲通3-33
大磯オフィス:神奈川県中郡大磯町大磯636-1
電話045 900 8611
FAX045 330 6853
メールinfo@hitoshizuku.co.jp
代表こくぼひろし
設立2016年3月
資本金3,000,000円
事業内容広報及びパブリックリレーションズ代理業
ソーシャルグッドプロジェクトの企画・制作・運営
顧問弁護士丁絢奈(よこはま第一法律事務所)
税務顧問元小出 悟(会計事務所ユニークス)
顧問社労士社会保険労務士法人ワーク・イノベーション