CASE 03
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
(2016年4月〜)
戦略的広報のための改革を、チームの一員として。
人類が自然と調和して生きられる未来を目指し、約100カ国で活動している環境保全団体であるWWFジャパン。この団体において、広報業務全般を担っているのが、現在6人で構成されるメディアチームです。ひとしずくとパートナーシップを組んで2年半、WWFジャパンにとっての広報PRはどのように変化していったのでしょうか。コミュニケーションズ&マーケティング室のメディアグループ長の山本亜沙美さんにお話をうかがいました。
戦略的広報のために体制ごと刷新。ひとしずくが入り、運用体制を整えていった1年目。
ひとしずく担当者 たかはし(以下、たかはし):
まずは、ひとしずくにお声がけいただいた時に、どんな課題を持っていたのか教えていただけますか?
WWFジャパン メディアチーム 山本亜沙美さん(以下、山本さん):
そうですね、最初にあったのは、戦略的にプレスワークをしていかなければ、という課題認識です。
私も広報の仕事というのはWWFに入ってから携わった仕事なので、未経験に等しかった状態でした。そのためそれまでのプレスワークは、ゴールがわからずこなすだけの業務になってしまっていたと思います。他部署から依頼されたリリースの体裁を整えてメディア各社に流すだけだったり、単純に自分たちが言いたいことをそのまま書いて流したり……
体制としても、現在のメディアグループは存在しておらず、広報室という部署があって、寄付者への会報誌を作る担当、企業との連携を行う法人担当などが所属していました。プレスワークは私だけでやっていたこともありました。とにかく目の前にあるものを打ち返すような日々で、全体的戦略がないから、常に「これでいいのかな?」という不安感が拭えなくて。全体感がないなかで当然のことですが、成果の確認や評価をする習慣自体もなかったんです。
私自身も、広報室のみんなにも、広報戦略が必要だ、変えていかなきゃ!という認識はあったのですが、でもどうしたらよいのかわからない状態でした。変化のきっかけは2016年、団体として体制を整えるべく、「良質な対メディアのコミュニケーション」「記事や発信情報の露出率の向上」「露出の質の向上と把握」を目標とするメディアグループという部署を置くことになったんです。そのタイミングで、以前から交流のあったひとしずくのこくぼさんに、体制づくりからご相談することになりました。
たかはし:
私たちひとしずくにとっても、WWFジャパンさんは、もっとも長い期間支援させていただいている団体さんで、広報体制づくりからお手伝いさせていただきました。やはり体制構築の最初の段階はご苦労が多かったのではないですか?
山本さん:
そうですね、ひとしずくさんに入っていただいて、5年計画で改革を行なっていこうという方針を立てて実行しているのですが、思い返すとやはり1年目は大変でしたね。メディアに何をどのように発信していくか、ゼロから組み立て直すことが必要でした。今まで「なんとなく」や「目の前に来たものを打ち返す」感覚で行なっていた業務を、仕組みを作り、効率的に運用していくよう整備していったんです。
例えば、プレスリリースの運用が大きく変わりました。今までは、他の各部署の方から、バラバラの書式やメールなりでリリースの依頼があり、私が個別に対応してリリースを作成し、メディア各社に流していました。今は、オリエンシートのフォーマットに沿って他部署の担当者がリリースの第一稿を書き、私たちメディアグループが戦略的視点から切り口を変更したり、修正したりしてリリースするという形になりました。今、何を目的にリリースするのかを意識する作業は、質的な変化を生んでいるように思います。効率化しつつ、精度も高められる運用になったと感じています。また、依頼側の各部署の担当者にも、やり取りを重ねてリリースを作っていく中で、どういう視点がメディアに取り上げてもらうには必要なのか、少しずつ理解していただけたような気もしています。
他部署を巻き込んでの改革でしたし、通常業務を行いながらの変化はパワーが必要でした。幸いメディアグループのメンバーは素直なひとが多く、うまく分担してチームワークよく取り組めたと思います。
改革を進めるなかでわかってきた、社内広報という役割
たかはし:
2016年4月に体制を変えて、お話を聞いている今2018年10月で約2年半になるかと思います。5年計画の半分が過ぎたところだと思いますが、現状で出ている成果や、新たに発生してきた課題などはありますか。
山本さん:
改革に取り組んで、時間や運用の効率化はもちろん、外からの視点を獲得できたというのは大きいと思います。今このリリースを出してメディアに紹介してもらえるのか、世の中が求めている情報なのか、メディアチームとしてそういったフィルターでリリースを考えられるようになりました。
ただ正直なところ、団体内の他部署からは、まだまだメディアチームは「WEBを更新してくれる人たち」「プレスリリースを渡すとメディアに流してくれる人たち」と思われているようで、そこはこれからの課題です。私たちとしては、早い段階から相談してもらって、私たちが外からの視点を提供することで、響く情報発信をしたいと思っているのですが、修正の余地がない内容とタイミングでリリース案が来ると、どうしてもそのまま流すしかないということも多々あります。
ただリリースを流すだけではない、頼りになる存在なんだということを、団体内にPRしていく必要があるなと感じています。
たかはし:
WWFジャパンさんは、メディアワークの改革だけでなく、内部広報の強化にも課題感を持っていらっしゃったのですよね。
山本さん:
メディアグループを立ち上げるにあたり、こくぼさんとお話していた時に、組織における広報機能というのは、外部に向けていかに情報発信するかということと同時に、「情報のハブになる」機能も担っていく必要がある、という話があったんです。
多様な活動を展開するWWFジャパンのなかで魅力的な情報をキャッチアップしていくことから広報が始まるし、そのキャッチアップのための活動は組織にとって、広報以上の価値も生み出すはず。グループを立ち上げてから、他グループで今何が進んでいるのかという情報をキャッチアップする場として、グループ会議に出席するようになったんですね。そしたら今では、いろんな人から、いま他のチームでは何をやっているのかを私たちが尋ねられるようになったり、他チームの報告や議論の仕方が変わったという声もありました。会議に同席するだけではなくて「メディアグループから他チームの動きの共有をお願いします」と時間をもらうこともあって。まさに情報のハブになることができている、そんな場面も増えてきたのかなと感じます。
たかはし:
現状、ご自身で取り組んでよかったなと評価されていることは、どんなことがありますか?
山本さん:
本当によかったなと思っているのは、モニタリングをしっかりできる体制が整ったことです。プレスワークに関してのモニタリングやSNSの反応調査などは手弁当で片手間でしかやってこなかったので、これだけ露出していたんだ、と実感できたり、SNSから今一般の方が興味のあること、呟かれていることをリアルに感じ取ることができたり。逆にリスクになりうるツイートやワードもちゃんと可視化できるようになり、間違った怖がり方をしなくてすむようになったことも大きかったと思います。
なんとなくではなく、半期や年間ごとのデータを根拠として、きちんと広報の評価ができるようになりました。それによって、WWFジャパン内で私たちメディアチーム自体を評価してもらえることにもつながりました。
「ひとしずくさんのことは、チームの一員だと思っています」
たかはし:
私たち、ひとしずくへの評価はどうでしょうか?不満とか・・・これから期待することなど、なんでも教えてください。
山本さん:
NGOは、声明や報告書をリリースするなど、一般企業とはやっぱり広報する内容がまったく異なると思うんです。PR会社の方で、それを理解してくれるところはほとんどなかったんですね。でも、ひとしずくさんは自分たち自身が社会的課題を解決することを目指しているから、温度感が合うんです。細かく説明しなくても、どんな状況なのか理解していただけて、とても仕事がしやすいし、寄り添って提案していただいていてありがたいと感じています。
なんというか、発注している委託先の方々ではあるんですけど、個人的には、みなさんをチームの一員みたいに思っているので。だから、どうでもいいこととか相談しちゃったりして(笑)
たかはし:
いやいや、そんなどうでもよいことを相談された覚えはないですよ。いつも大事なことを相談いただいていると思いますよ(笑)
山本さん:
そうですか、それはよかった。期待することとして、これからも気軽に相談できる存在でいていただきたいです。遠慮してほしくないし、遠慮したくない。いろいろお話できるこの関係性はこれからも大事にしたいなと思っています。
いっしょにお仕事したいと思うかどうかって、結局お人柄ですよね。ひとしずくさんの社員のみなさんって、ホームページを拝見したらみんな代表のこくぼさんに見えて笑っちゃいました。やりたいことの軸がしっかりあるから、似たような志の方が集まるんでしょうね。
「他のNGOの方々にもお手本になるような、そんな広報が徐々にできるようになっていっていたらいいなと思います」
山本さん:
もうひとつ、ひとしずくさんにチームに入っていただいて大きかったのは、外からどう見られているかという目線の獲得ですね。具体的には、WWFジャパンにはさまざまな分野の専門家が多数所属しているのですが、そういったことは外に発信していなかったんですね。その指摘を受け、きちんと一人ひとり専門家の写真を撮影し、団体の信頼感の向上を図る動きにつながりました。メディアの記者の方一人ひとりとの対話やリレーションも大切にしなければいけないということも、教えていただきました。
ひとしずくさんに関わっていただいてから、ほかのNGO・NPOの方に私たちのメディアワークを評価していただいて、どんなことをやっているんですか?と質問を受けることが増えたんです。同じような立場の方々の目にとまったり、気にかけてもらったりするような仕事ができているなら、嬉しく思います。
日々悩むことは多いし、正解がない広報という仕事だからこそ、ひとしずくさんといういっしょに悩める外の仲間は大きな存在です。広報ってすぐに答えが出ませんし、長期的な視点が必要とされる仕事ですよね。長期的につきあっていけるような、みなさんのような人柄ってすごく大切だと改めて思いました。これからもよろしくお願いします。
撮影:疋田千里 編集:ちばたかこ
RECENT WORKS
社名 | ひとしずく株式会社 |
所在地 | 本社:〒231-0003 横浜市中区北仲通3-33 大磯オフィス:神奈川県中郡大磯町大磯636-1 |
電話 | 045 900 8611 |
FAX | 045 330 6853 |
メール | info@hitoshizuku.co.jp |
代表 | こくぼひろし |
設立 | 2016年3月 |
資本金 | 3,000,000円 |
事業内容 | 広報及びパブリックリレーションズ代理業 ソーシャルグッドプロジェクトの企画・制作・運営 |
顧問弁護士 | 丁絢奈(よこはま第一法律事務所) |
税務顧問 | 元小出 悟(会計事務所ユニークス) |
顧問社労士 | 社会保険労務士法人ワーク・イノベーション |