CASE 08

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

(2016年10月~2018年3月)

問題の根本を改めて問い直し、新しいアプローチ方法にチャレンジ

世界的な環境NGOとして知られるグリーンピース。地球規模の環境破壊を止めるため、政府や企業から資金援助を受けず、独立した活動を世界55以上の国と地域で展開しています。その日本事務所であるグリーンピース・ジャパンで取り組んできたプロジェクトのひとつが、海を守る活動です。ひとしずくにお声がけいただいたのは、持続可能な水産物「サステナブル・シーフード」を切り口に新しく活動を展開するタイミングでした。広報担当の土屋亜紀子さんにお話をうかがいました。

「根本から突き詰めてディスカッションを重ね、視点を拡げることができました」

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン 広報担当 土屋亜紀子さん

ひとしずく担当者 かねこ(以下、かねこ):
まずは、ひとしずくにお声がけいただいた時に、どんな課題を持っていたのか教えていただけますか?

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン 広報担当 土屋亜紀子さん(以下、土屋さん):
これまでグリーンピースでは、アンケート調査をもとに「水産物の調達方法がサステナブル(持続可能)なスーパーマーケット」のランキングを発表することで、企業や生活者の方に海を守る意識の働きかけを行ってきました。このアプローチは2011年から7年間に渡って実施してきたのですが、一定の反響がある一方で、関心を持つ層は固定化されてきてしまっていたんです。

とくに海に関連するトピックスは、海や海の生き物、マリンスポーツが好きな方、漁業関係の方など関心を持つ方が比較的限られており、それ以上に拡がりを持たせることが難しいと感じていました。メディアの方へのアプローチも同様で、調査結果をプレスリリースして記者会見をする、という手法だけでは大きく記事に取り上げていただけることが難しいと限界を感じていました。新たな視点や手法で、活動を見直すことが求められていたのです。

そんな時、あるスタッフの一人がひとしずくのこくぼさんにお声がけさせていただきました。二人は、学生時代から環境問題に関する活動を通じて知り合いだったようですね。わたし自身は、ひとしずくの社名の由来でもあると思いますが、「ハチドリのひとしずく」のストーリーに共感していました。

かねこ:
グリーンピースさんの活動は、わたし自身も学生の頃から注目していました。政府や企業から資金援助を受けず独立しているからこそ、メッセージを直接的に届けることができる点が強みだと思います。半面、直接的なアプローチだからこそ、受け手にとっては比較的「強い」印象に受け取られがちですよね。ご相談いただいた際、まずは打ち出し方を工夫したいと思い、取り組ませていただきました。実際には弊社が関わってどのような点に変化を感じられたでしょうか。

土屋さん:
通常、新規にプロジェクトを始める際は、専門的な知識や経験のあるスタッフが企画を提案し、内部で採用するかどうかを話し合う、というプロセスをとります。問題の切り口や解決へのアプローチは、プロジェクト開始時点でディスカッションすることはありませんでした。

でも、このサステナブル・シーフードについては、ひとしずくさんにお願いした最初の時に、時間をかけて深くディスカッションできたことが良かったと感じています。この問題の根っこは何か、アプローチしたいターゲットは誰か、彼らに向けてどんな切り口やアプローチ手法が考えられるか、といった視点です。過去の手法にとらわれず、根本から突き詰めて考えることで、その後の拡がりにつながったと思います。

新しいアプローチにチャレンジしたことで認知度を上げることができた

ひとしずくの担当 かねこまみ

グリーンピース・ジャパンとひとしずくが行ったデスカッションメモ。紙に書き出しながら問題の根本を整理した

かねこ:
「サステナブル・シーフード」は、一般の方にとって「食」という身近なテーマであるはずなのに、コンセプトや問題の全容が理解されづらく、当初は何をどのように伝えるべきかを整理することに時間がかかりましたね。でも議論の過程を経たことで、わたし自身も問題全体を深く理解できました。また、最初は一般の方向けに実際にサステナブル・シーフードを食べるイベントを実施しましたが、企画のやりとりを通じて、グリーンピースさんのスタンスや弊社に求められていることがよりクリアになりました。

土屋さん:
そうですね。サステナブル・シーフードの一連のPRのなかでも、ひとしずくさんに企画いただいた絶滅危惧種であるニホンウナギの調査PRは、グリーンピース・ジャパンとしても初めての試みで、意義あるものになったと感じています。
「絶滅危惧」という危機的状況を、ただそのまま「危機だ」と伝えるだけでは拡がらない。ニホンウナギの関心が高まるのは夏の土用の丑の日ですが、あえて“意外性”を狙って真逆の「冬」の土用の丑の日をフックにすることを提案いただき、ストーリーやプレスリリースのタイミングなど全体の戦略を考えていただきました。これまでは調査を発表するだけでしたが、それ自体をどう拡げるか、という視点をもって取り組めたことは大きな一歩でした。

かねこ:
ニホンウナギの調査は、最適なタイミングで出せたことでニュースのコメント欄やSNSで議論が起こり、皆さんに考えていただくきっかけになりましたね。

土屋さん:
はい、響く層を拡げるためには、情報をいつ出すかというタイミングも重要なんですね。これまでは他のプロジェクトとの兼ね合いなど内部の都合で出してしまいがちでしたが、時事的なタイミングを狙えたことも良かったと思います。これまで取り上げられたことのなかったウェブニュースに記事が掲載されたり、著名なジャーナリストの方が記事に注目してSNSでシェアしてくださったり、ネット上でニュースが拡散され議論が巻き起こりました。そのおかげで、普段ニホンウナギについて気にしていない人にも関心を持っていただけましたし、全体として認知度も上がりました。

ひとしずくさんには個別にメディアの方へアプローチをしていただきましたが、調査をきっかけにメディアの方に「サステナブル・シーフード」自体に関心を持っていただくことができました。記事化していただいた中でも、「サステナブル・シーフードとは何か」という用語解説のページを設けていただけて、一過性の記事ではない長期的なコンテンツを掲載いただいたことも成果の一つだと思っています。

東京・青山にあるパン屋「パン・オ・スリール」にてサステナブル・シーフードをアピールするイベントも実施した

「ファクトブック」の制作過程で組織内を横断して過去の活動を整理。団体内で共通認識を作ることができた

かねこ:
他に弊社が関わって何か変化が起きたことはありますか?

団体の活動全体をメディアへ紹介する「ファクトブック」を制作

土屋さん:
メディアの方に向けてプロジェクトを紹介する資料として作成していただいた、私たちがどのような団体なのかをまとめた「ファクトブック」は、大きかったです。プロジェクトごとのパンフレットはあっても、団体全体を数値やデータを交えて紹介する資料はなかったので。内部でプロジェクトや部署を横断して、団体としての言葉の使い方や過去の活動の整理を行い、制作の過程で共通認識が作られていきました。今では、メディアの方に配布する資料としてはもちろん、新しいボランティアメンバーや外部の方に団体を理解いただく際の資料としても活用しています。

かねこ:
内部で共通認識がつくられることは、インナーコミュニケーションの強化だけでなく、誰でも外部に統一した内容を発信でき、団体への信頼性向上にもつながると考えています。単に資料を作る、ということだけでなく、それ以上の副次的効果が見込めますね。ぜひ今後も定期的に更新して、活用していただきたいです。

 
撮影:疋田千里 編集:ちばたかこ

RECENT WORKS

社名ひとしずく株式会社
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大磯オフィス:神奈川県中郡大磯町大磯636-1
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FAX045 330 6853
メールinfo@hitoshizuku.co.jp
代表こくぼひろし
設立2016年3月
資本金3,000,000円
事業内容広報及びパブリックリレーションズ代理業
ソーシャルグッドプロジェクトの企画・制作・運営
顧問弁護士丁絢奈(よこはま第一法律事務所)
税務顧問元小出 悟(会計事務所ユニークス)
顧問社労士社会保険労務士法人ワーク・イノベーション